心理的背理法(1)-Ⅰ (ページ49)

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クリスマス当日は雪でも降っているのか、石造りの床はいつにも増して尖った冷たさだった。

目覚めて直ぐに床に着けた足を引っ込めた。

「お目覚めでしょうか？旦那様がお呼びです」

「起きてるわ。今行く」

ドアの外で、私が起きるのを待ちかねたようにメイドが私を呼ぶ。
朝日も入ってこないこの部屋では、寝覚めも悪くなろうものだが、あまりの寒さに既に目はぱっちりと開いていた。

急いでパジャマからセーターに着替えて、階下へ降りる。

「あなた宛てのプレゼントよ」

暖炉前に積まれた大小様々な箱は、全て私宛だという。

こんなに沢山もらったのは初めてだ。

はやる気持ちを抑え、手近にあった包みを開ける。

『A・フリント様

入学、そして聖なるクリスマスのお祝いに』

トラバース、レストレンジ、ロウル、グリーングラス。

どれも聖28一族に名を連ねる、純血の家名。
どの包みも同じ漆黒のリボンで飾られ、同じような文言のメッセージカードがついていた。

私のわくわくとした気持ちはプレゼントを開ける事に萎んでいく。

数十ガリオンはくだらないと思われる、宝石やアクセサリーの類には少しも心を惹かれることは無かった。

「2学年に上がる前の長期休暇に、我がフリント家では子息の社交界デビューのパーティーを行う伝統がある。その前準備に祝いと共に媚びまで送ってきたな」

げっ、と思わず声を出しそうになる。

まさか。

マルフォイ家も聖28一族の由緒正しい名家ではあるので、当然と言えば当然なのだが。

私が中身も見ずにそっとプレゼントの山に戻した小箱を目敏く父が拾い上げ、眉をひそめた。

「ルシウスからだぞ。なぜ開けない？」

再び手渡されてしまっては開けるほかなかった。

『A・フリント様

ご入学おめでとう。君のクリスマスプレゼントと聞いて
ドラコが選んだものだ。ぜひ使ってやってくれ。

お父上とお母上によろしく』

丁寧な包装を解くと、プレゼントは手鏡だった。
鏡面の反対側には大きなエメラルドがはめ込まれ、シルバーで縁どられている。

マルフォイにしてはいい趣味だ。

本当はすごく素敵だと思ったけれど、いかんせんもらった相手が相手だ。素直に受け取りがたかった。

ハリーやハーマイオニー、ロンからのプレゼントは無いようだった。それもそうだろう。こんなところに贈り物なんか送る気もしない。

大量のネックレスやら髪留めやらを抱えて、私はとぼとぼと自室に戻った。