心理的背理法(1)-Ⅰ (ページ47)

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「連れていきなさい」

これから休暇明けまで、私は家の隅の隅、暗くて日が差し込まない部屋で過ごすことになった。

簡易的なベッドに机しかない、まるでアズカバンの囚人になったような気分だった。

しかもこの部屋、天井からちょうど目線の高さまで、びっしりと人形が飾られていて気味が悪い。
昔からこの場所が、私の躾の場だった。

「あと2週間…」

取りだした羊皮紙に、日にちとホグワーツまでの日数を書き込んで手製のカレンダーを作った。

クスクス、と傍から笑う声が聞こえる。

「今更、もう怖くなんてないわよ」

この部屋の人形には、魂が込められている。

フリント家には代々、子供が産まれると両親が赤子の姿をかたどった人形を作るという習わしがある。

特別な魔法がかけられたその人形は、魂の持ち主が成長すると共に、同じように容姿が変化していくのだ。

やがて持ち主が亡くなると、その魂はこの人形に宿り、永遠に家系を見守る役となる。

だから別に喋っても笑ってもちっともおかしくないのだ。
幼い頃の私は、それが怖くって怖くってたまらなかったのだが。

「課題を進めないと…それに、ニコラス・フラメルの事も」

小さな豆電球を頼りに羊皮紙と教科書を引っ張り出し、羽根ペンとインクの用意をすませる。

ホグワーツの先生方はたんまりと課題を出してくれた。
しばらくは退屈することも無く過ごせそうで、むしろ有難かった。

「フラメル、ニコラス・フラメル……ふふっ」

山ほどの人形の中で、どれかがぽつりと言った。

私は慌てて声を辿るも、すぐに他の人形達が折り重なるように笑い始めてしまったので、結局見失ってしまった。

含み笑いに気分を害されながら、私は再び教科書へと目を向けた。