心理的背理法(1)-Ⅰ (ページ31)

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「Ms.フリント！」

3メートルほど下に、マダム・フーチの声が聞こえる。
箒に乗ったのは初めてだ。当然のように足がすくみ、体が震える。空中でバランスが定まらない私に、眼下からスリザリン生の笑い声が起こる。

「ネビル！手をこっちに！」

それでもなんとか姿勢を立て直し、あちこちに振り回されるネビルの方へ急ぐ。私に気がついたネビルは縋るような目で、助けて！と叫んでいる。

「ネビル！」

とうとうネビルは箒から手を離した。一瞬、声にならない悲鳴をあげて真っ逆さまに地面へ落ちていく。

箒の柄をぐっと地面とほぼ垂直にまで下げ、私もネビルと一緒に6メートルくらい先へダイブした。

_______お願い、間に合って！

危機一髪。
地面に激突するわずか2メートル程のところで、私はネビルの首根っこを掴んだ。体重を右手全てで支えたので、ぐんっと引っ張られ、ドサッと音を立ててネビルと共に着地した。

「無事ですか！フリント、ロングボトム！」
「は、はい…なんとか」

マダム・フーチが焦ったように駆け寄ってくる。
ネビルはパニック状態で、その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

「怪我はないようですが念の為医務室に行きましょう。どの道、ロングボトムはこの状態では授業は続けられません」

マダム・フーチに連れられ、私とネビルは校庭を後にした。ネビルに怪我は無かった。私も軽く右手を捻っただけで、包帯を軽く巻いて済んだ。

フーチ先生は、私が無茶をしたことについて説教をしたがその後にひとつ付け加えた。

見事だった、と。