心理的背理法(1)-Ⅰ (ページ20)

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「よし、しっかりつかまってて」

おずおずと両手を首にまわす。誰かにおぶってもらうのは
初めての経験だった。父や母は私を決して抱いたり、おぶったりなんてしなかった。小さな頃から1人でなんでもできるようになるのは当たり前で、泣き言や甘えは許されなかった。

頭の片隅でそんなことを思い出した。それはこの広くて暖かい背中のせいだろうか。

「やあ、セドリック。こんな夜更けに何か用か？」
「こんばんは、パーシー。実はグリフィンドールの
1年生を連れてきたんです」
「まさか！……あぁ、よかった。今ちょうど探しに
出ようとしたところだった」

パーシーは私の顔を確認すると、安堵したように息をついた。

「廊下で体調が悪そうにしていたから、
とりあえずここまで来ようと思って」
「助かったよ。A、大丈夫か？」
「はい、大丈夫です」

私が背中から降りると、セドリックは良かったと目を細めた。

「それじゃあ、僕は寮に戻ります」
「ありがとうございました」

礼を言うと、お大事にと言って来た道を戻っていった。

ピンクのドレスを着た婦人の肖像画に、パーシーは咳払いをして、合言葉を言った。

「カプートドラコニス」
「1年生ね！ようこそ、グリフィンドールへ」

肖像画がパッと前に開き、その先には薄暗い丸い穴が続いている。パーシーに助けて貰ってその穴によじ登ると、
グリフィンドールの談話室に通じていた。

暖かく暖炉が燃え、ふかふかとした古そうな肘掛椅子がいくつも置いてあった。

兄から聞いていたスリザリンの談話室よりは過ごしやすそうで、私は少し安心した。