あなたの願いを言ってみて (ページ3)

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第一話「少女の目覚め」ページ3

オルゴールの音が聞こえる。
心地のいいその音色は、柔らかく私を包み込んだ。まるで子守歌のように優しく、そっと響かせる。何故だか妙に、とても懐かしく感じた。

――ここはどこだろう

――私の周囲は、広い光に包まれていた

――その先には何も見えない

――オルゴール以外の音も聞こえていない

――何の感触もない

――私は、誰なんだろう

自分の記憶を探ろうとする。
けれど、何も見つからない。何も。何も思い出せなかった。
ただ、ただ、白い世界で一人きり――

どこへ向かうべきなのか、何をするべきなのか分からない。考えられない。
頭の中も真っ白で、記憶そのものが抜け落ちているように感じた。

「・・私の声が、聞こえるか？」

――だれ？

どこからか、声が聞こえた。
知らない男の人の声――。
だけど、その声にはどこか、あたたかさのようなものを感じた。
まるで、そう、ずっと前から彼のことを知っているかのような――そんな感覚を覚える。
けれど誰なのかは思い出せなかった。

――聞こえる、聞こえているわ。

(だからあなたのことを教えて)

問いかけてみたけれど、口から出たのは空気だけ。
言葉が出てこなかった。
まるで、人魚姫のように声を失ってしまったみたいだ。

「・・ずっと、お前を見てきた。遠い昔から」

――ずっと？ずっとって、どれくらい前なの？

「ふっ。だからこそ、まさかお前がこの世界に行きつくとは思わなかったが・・・」

――この世界？

「お前が求めていたものは見つかったか？」

――私が、求めているもの・・？

自分は、何かを探していたのだろうか。
分からない、分からない。
どれだけ考えても思い出せない。

「・・まだ、見つかっていないようだな」

――知らない。そもそも何を探しているのか・・

「安心するといい。この世界には、お前を大事に思ってくれる者達がいるからな」

――私を思ってくれる？

「彼等とこの世界で見つけるといい。―――を」
「この、あたたかくも虚しい、箱庭の世界で――」

――なに？聞こえないわ。私は何を探せばいいの？

「きっとお前ならば見つけられる」
「私との約束だ」
「さあ、もう時間だ。行っておいで、私のかわいい―――」

――まって、ねえ、お願い！いかないで・・！