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零の突き刺さるような視線に、
遂に私は白旗をあげざるを得なかった。




『私は零の事、誰よりも信用してるよ。
でもね、誰よりも貴方の事がわからない』




私が投げ捨てるように言うと、零は
少し目を見開く。


しかしすぐにまた目つきを鋭くさせた。





「それはこっちのセリフだ、A。
俺はお前を守ることも許されないのか?」





生暖かい手が、ゆっくりと私の頬を
滑らせる。


まるで壊れ物を触るかのような手つきに、
背筋がゾクゾクとした。




「俺にはもうお前しかいない。
お前まで、あいつらの所に行くのか?」




そう言う零の目はさっきまでとは
打って変わって、もうすぐに泣きそうな
目をしている。



その強い瞳の奥には泣きべそをかいている
私の姿がある。



零の目の前には私がいるのに、
私の目の前には零じゃない誰かがいる。



……こんな零、知らない。





『私はどこにもいかないよ、零の
そばにいる』





ゆっくりと震える手で零の頬に触れた。



色素の薄いその綺麗な髪から覗いた
瞳は一瞬揺らぐ。





「……そうか」





どこか満足げに微笑んだ零はゆっくり
体を起き上がらせると私から
離れようとする。




しかし私はそれを遮るように、
零の手首を掴んだ。



その時私は無意識で、後先考えずに
こんな行動をとってしまったことを
後悔していた。



行き場を失った私の手首を零は優しく
振りほどく。




今度こそ全てを失ったような気がして、
更に私は虚無感を覚える。





……こんな事になるなら、私達は本当に……





『……本当に、出会わない方が良かったの?』

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作者名:ももりんご | 作成日時:2018年5月27日 17時

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