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安室透だったら、バーボンだったら、
こんな質問笑って返してくれる。



零はこちらを振り向いてくれず、
ただその広い背中を私に
みせつけていた。




『零……』




名前を呼んでも零は振り向かない。



もしかして零じゃないのかもしれない。
じゃあ誰の名前で呼べばいい?



安室さん? バーボン?



……私には、貴方の背中を見てその名を
区別する術はないんだよ。






『零にとっての私って、なに?』






気がつけばそんな突拍子もないことを
口にしていた。



何を期待してるんだ、……自惚れてるんだ。




私と彼がこれ以上の関係になれないことなんて
もうとっくに知っていたことだろう。




応えなくていい、そう言おうとした
瞬間、こういう時に限って零は
こちらを振り返った。





「守りたい人、……」





振り返ってくれた零の表情は、これまた
分かりにくいものだった。


怒っても、悲しんでも、笑ってもない。


それでも無表情とか言い難いその顔を見て、
私の頬には涙が伝った。




『何それ……馬鹿みたい』




悪態をついたというのに、やっぱり
優しい零は拭えない。



体が暖かくて、自分が抱きしめられていると
確認するのには大分時間が経った。



震える腕で、ゆっくりと零の背中に
触れてその体温を確かめるようにしてから
抱き締め返す。




すると次第に零が私に体重を
預け始め、耐えられなくなった私は
零を抱きしめたままベッドに倒れ込んだ。




『いっ……零?』




思わず閉じてしまった目を開けると、
零の顔は思っていたよりも近くにあった。



それに驚く暇もなく、唇に切ない
体温が伝わる。





本当に馬鹿だよ、私達。





この歳になって、お互い理性も
抑えられないんだから。







閉め切ったカーテンの隙間から、
静かに月の光が刺した。

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作者名:ももりんご | 作成日時:2018年5月27日 17時

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