僕の隣 (ページ10)

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10.　恥ずかしさ2倍ページ10

＜SIDE北斗＞

「え？！」

滝沢総合病院の新病棟の設計会議に向かう車の中で、助手席に座るAが叫んだ。

「うわ、声でかいな」

「え、せ、正社員…？」

「うん。どう？今話した通り、条件もそんなに悪くはないと思うけど」

運転しているから見えないけど、多分目まん丸にして驚いてんだろうな。

「…え、あ、なんで私が？」

「上は学歴があるからって喜んでて、俺たちは建築の知識があるから助かってるから」

「…そうですか」

「…何。何か気になることでもあるの？」

申し分ないはずの条件なのに何故か考え込む様子のA。

「いや、そうじゃなくて…その」

「…もしかしてさ」

「はい」

何かに躊躇しているAに、

「悩んでる理由って昨日の京本とかいう幼馴染のせい？」

ちょっと突っ込んだ質問をしてみた。

「…え、あ、どうして」

「どうしてって、図星なんだ」

ちょうど赤信号になってAの顔を見ると痛いところをつかれたような顔をしていた。

「…あ、え、でも何で分かったんですか？」

「何か昨日の見てて分かったっていうか。すっげぇ過保護だなぁって」

「…まぁ、確かに」

「昔からああなの？」

「はい。小さい時からずっと一緒なので。まぁ、一つ年下なんですけど」

「ふぅん」

タイミング良く青信号になり再びハンドルを握って、前を向く。

「あの、少しだけ考えさせてもらってもいいですか？」

「うん。別にバイトとしてはまだ契約期間残ってるし、ゆっくり考えてくれればいいよ」

「ありがとうございます」

前を見ながらそう言うと、彼女はそう言った。

「でもさA」

「はい？」

ちょうど病院に到着したから、

「お前には才能があるよ」

シートベルトを外しながらそう言うと、

「…へ？」

間抜けな声が返ってきた。

「それに見合う努力もできる人間だと俺は思うし」

「…あ、ありがとうございます」

「それと、お前がいてくれて俺は助かってるから」

「…松村さん」

「俺、ちょっと知り合いに会ってくる。カフェかどっかで休んでて」

「はい」

自分で言ってて恥ずかしいセリフだけど、なんか言えちゃって、さらに恥ずかしくて、そのままAの顔を見ないで車から降りた。