僕の隣 (ページ38)

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38．知っちゃダメだったページ38

しかも、

「その一件は血縁者間で、別の人間だった」

しょっぴーは続けてそう言った。

「…え、じゃあ、Aは？」

「そこなんだよ。その記録がどこにも残ってない」

「…それってどういう…」

頭をかきながら困った表情を浮かべるしょっぴーに俺も戸惑った。

「あの二人の移植のデータがないんだよ」

「…どういうこと？え、移植自体が嘘ってこと？」

「その可能性はない」

「え？」

「当時のAちゃんの電子カルテが残ってて、その検査データを同期の感染内科の奴に見てもらった。そしたら移植一択しかなかった」

「…は？え、どういうこと？」

「おかしいだろ？危険な状態のAちゃんが治療を受けた形跡はごくわずかなのに、彼女はほぼ完治してる。だけどその記録が途切れてるんだよ」

次々と新たな事実が明らかになっていく。
正直、しょっぴーの話にはついて行くのがやっとだった。

でも、確かさっき…、

「…今日だって言ってた」

俺はAから聞いた言葉をぽつりとつぶやいた。

「…今日？何が？」

「記念日だって。1994年の今日、京本がドナーになってAを救った日」

「…ちょ、ちょっと待って」

俺の言葉を聞いて焦りだすしょっぴー。

「…何？」

「坊ちゃんの生年月日は1994年12月3日」

「…それが何？」

病院のホームページの医者紹介のところタブレットで見せたしょっぴーは画面を変え、

「臍帯血は採取してから半年経たないとバンクに登録されないシステムなんだよ」

…半年？いや、でも…、

「…Aの移植日って1994年12月4日だよ」

記念日だって、本人が言ってたんだから。

「もしその記念日が本当だとしたら、Aちゃんが移植を受けたのは坊ちゃんが生まれた翌日ってことになる。でもこれはありえない」

Aについて明かされる事実に俺は、怖くて知りたくない気持ちの方が大きくなっていた。