僕の隣 (ページ28)

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28．ささやきページ28

＜SIDE大我＞

≪Aが倒れました≫

電話越しにそう言われた瞬間、心臓も時間も一瞬止まった気がした。
仕事を少しだけ抜けさせてもらって、病室に向かう今もあの人の言葉が頭をぐるぐる駆け巡っている。

「Aっ！！」

白衣を着たまま病室に飛び込むと、

「…父さん」

眠るAの隣に立つ白衣姿の父親の姿があった。

「静かにしなさい。それから病院では『副医院長』だろう」

「…あ、そうだった。ごめん。で、Aは？大丈夫なの？」

「なに、少し風邪が長引いたんだろう」

父さんは点滴のクレンメを見ながら俺の質問に答えた。

「…良かった…あ、検査は？してくれた？」

「うん。数値も特に問題はなかった」

「…ありがとうございます、副医院長」

タブレットを手渡す父さんに改まって頭を下げる。

「Aちゃん、仕事忙しいのか？」

「…うん。本人は楽しそうに通ってるんだけど、今回はそれが裏目に出たみたい」

「しっかり見てあげないとダメだろ」

「…ごめん」

俺が頭を下げると、

「お前はこの子のために産まれてきたんだから」

近づいてきた父さんが耳元でそうささやいた。

「…分かってるよ」

俺はうなずく。

すると

「…ん」

閉じていたAのまぶたが少し動き、小さく声がした。

「大我、ついていてあげなさい」

「うん。…A？」

病室を後にした父さんを見送り、俺はすぐさまAに駆け寄った。

「…大我…」

「…バカ。どんだけ心配したか分かってる？」

「…ごめん」

起き上がったAを思わず抱きしめると、ぽつりと聞こえてくる小さな声。

「…やだよ俺。Aがまた…」

「…大我っ」

そんな俺の言葉を遮って、離れたA。

その視線の先には、

「…どうも」

松村さんが立っていた。