僕の隣 (ページ27)

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27．あなたのためにできることページ27

「すみません、設計部のAって来ませんでしたか？」

「Aさん？借り出し記録がないから、まだ中にいるはずですよ」

地下の資料室でそう尋ねると、職員さんは借り出し記録を見せてくれた。

「…そうですか。ありがとうございます」

ダメだ。何だか嫌な予感しかしない。俺は会釈をして、資料室に入った。

「Aー」

他の人はいない時間帯みたいで、俺は声を出しながらAを探す。

「A…え」

建築系の資料が集まる棚に差し掛かった時だった。

「おいっ！Aっ！」

そこにはAが倒れていて、周りには本が散らばっていた。

「…何だよこれ…何でこんな…」

熱が高いんだよ。なのに顔真っ青だし。医療に詳しくない俺でも一目でおかしいと思った。

落ち着け。

今、Aのためにできることは？

「…悪い。ちょっと借りる」

焦る気持ちを落ち着け、Aの手に握られたスマホを取る。

Aは電話を掛けようとしていたのか、画面には、

【大我】

という名前と電話番号が表示されていた。

「…出ろ…出ろ」

俺は発信ボタンを押し、まるで呪文のように唱えた。
あいつが気に入らないとか、ここで頼ったら俺のプライドが、とかそんなのもうどうでも良かった。

すると

「もしもしA？どしたのこんな時間に」

Aからの電話だと思ったのか、嬉しそうなあいつの声がした。

「もしもし、京本さんですか？」

「…松村さん？どうして？」

んなのどうでもいいんだよ。

「Aが倒れました。どうすればいいか教えてください」

「…え？倒れた？」

「資料室で倒れていました」

「熱は？」

「高いです。おでこが熱くて、だけど顔は真っ青です」

「息はしてますか？意識は？」

「息はしてます。ただ、呼び掛けても目を覚ましません」

「分かりました。救急にはこちらから連絡をしておきます。あと10分ぐらいで着くはずです」

さすが医者という感じで、臨床じゃないはずなのに状況を把握し、
落ち着いて適切な指示を出してくれた。

「あの、俺は何をすれば？」

「氷ありませんか？おでこと首に当てて熱を下げてください」

「分かりました」

今日のところは坊ちゃんに感謝しないと、と思いながら俺は職員さんのもとへ急いだ。

昨日連れまわしすぎた？

それとも別の…？

そんなことを考えながらとにかく走った。