僕の隣 (ページ26)

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26．勘違いでありますようにページ26

翌日、

「Aー…あれ？」

いつもならそう呼べばオフィス中どこにいてもやって来る Aなのに、今日は違った。

「Aさんならさっき資料室行きませんでした？」

「資料室？…あ」

すぐ近くに座っていた部下に言われ、そういえば、と思い出す。

「A」

「…」

「ねぇ、A」

「…あ、あ！はいっ！」

30分ぐらい前、設計に必要な資料を頼むために、ここでAに声を掛けた。

でも

「どした？ぼーっとしてるけど」

なんかあいつ、魂抜けてたんだよな、今日。
ぼーっとっていうより、ぽけーっとしてる感じ。眠そうな、そんな感じ。

「い、いえ。何でもないです」

「これ、資料室から取ってきて。台車は借りれば良いから」

「はい。了解です」

でも考えすぎかな、なんてそのまま見送ったんだっけ。

そして今に至るんだけど、

「え、でも遅くない？」

「あ、確かに。もう30分になりますね」

部下の言葉にそんなに時間が経ったのかと驚いた。

「あいつがこんなに手こずることないと思うんだけどな」

「俺、見てきましょうか？」

「ううん、切の良いとこで終わらせたから俺が見てくるよ」

「了解です」

部下にそう告げ、俺はデスクから立ち上がった。

思い違いならいいんだけど、と思いながら。