僕の隣 (ページ23)

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23．王子様には負けたくないページ23

「A」

「…ん」

「着いた」

「…あ、はい」

ぐっすり眠っていた Aの肩を揺らすと、むっくりと起き上がり、カバンを取った。

「ちゃんと帰れる？」

「…は、い。大丈夫です」

「声カッスカスじゃん」

「…じゃ、またあした」

「うん、また明日。おやすみ」

寝ぼけてるAを心配しながらも見送る。

でも、

「しつれいしまっ、わっ」

助手席から降りようとした瞬間、どこかを踏み外したのかよろけるA。


「危ないっ！」

と手を伸ばすと、

「はい、ギリギリセーフ」

今一番聞きたくない声が暗がりから聞こえてきた。

「た、いが…？」

「もう、心配したよ？電話出ないから。ほら、大丈夫？」

間一髪のところでAは抱きとめられて、あいつはまるで王子様みたいにそう尋ねた。

「すみません。A、どこででも熟睡しちゃうんです」

「…いえ、今日は忙しかったんで」

「そうだったんですか。ずいぶん遅くまで会議してたんですね」

「…まぁ」

Aの肩を抱いて支えながらあいつはそう言った。

「送ってくださって、ありがとうございました」

「…いえ」

「あ」

「…何か？」

お礼を言って背を向けたはずなのに、すぐにこちらを振り返った坊ちゃんは、

「でも、人の電話勝手に切るのは良くないと思いますよ。…それじゃ」

同じ人とは思えないほどの冷たい目と声でそう言うと、マンションの中へと入っていった。

あいつ、俺の気持ちに気付いてんだ。

さすが医者だな。

「…あー、負けたくねー…」

柄にもなくそんなことを呟いて車を出した。