僕の隣 (ページ20)

今日:7 hit、昨日:14 hit、合計:34,808 hit

20．無茶ぶりページ20

＜SIDE北斗＞

「A、今日は直帰だから送るよ」

「あ、すみません。ありがとうございます」

取引先との会議終わりに運転席に乗り込みながらそう言うと、Aはぺこりと頭を下げた。

「ん、ちょっとナビつけ…あ、ちょっとごめん。…もしもし」

ナビをいじっていると電話が鳴る。

「あ、北斗？今仕事中？」

相手は姉さんだった。

「いや？取引先との会議終わってこれから直帰するとこ。何で？」

「1個頼みたいことがあって」

「ん？何？」

「ウエディングドレスとタキシード、選んでくれない？」

「は？」

ここ数年で一番のぶっ飛び無茶ぶりに思わず柄が悪くなる。

「実は今日見に行くはずだったんだけど、急な案件が入っちゃって。渡辺君も行けないって言うの」

「いやいや、ずらせばいいじゃん」

「ずらせないから頼んでるんでしょー」

「え、逆ギレ？」

姉さんガキん時から都合悪くなるとキレるんだよな。

「そこ小さいから予約もいっぱいで、お店側に迷惑掛けたくないの」

「いや、でもドレスって…タキシードなら選べるけど」

「会社に女の子いるでしょ？誰でも連れて行っていいから、ね？」

「…いる、けど…」

姉さんの言葉に思わず目線が隣のA へ行ってしまう。

「18時だから！地図はメッセージで送る！今度奢るから！じゃっ！」

「あ、ちょ、姉さん！」

ぶちっと切れた電話には文句の垂れようがなく、電話を見つめていると、

「…お姉さん、どうかされました？」

とA が心配そうな顔で尋ねてきた。

「…Aさぁ」

「…はい」

「この後時間ある？」

「ありますけど、残業ですか？」

カバンを前に抱えながら尋ねるAに、

「いや、ん～と、ドレス選び、付き合ってくんない？」

頭をかきながらそう言うと、

「…は？」

まぁ、誰でもそうなりますよねという反応が返って来た。