僕の隣 (ページ17)

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17.　よくも弟をページ17

＜SIDE翔太＞

「…舘さん、もう一杯」

隣に座る弟がカウンターの中の涼太にグラスを渡す。

「大丈夫？いつもよりペース速いけど」

嬉しい俺とは対照的に心配そうな涼太。

「なに。何かあった？」

「…あったっちゃ、あった」

「なんだそれ」

俺が尋ねると頬付けをつく弟。

「…しょっぴーさぁ、知ってた？」

「何を」

「…京本ってやつのこと」

弟が設計以外でうちの病院の話をするなんて珍しい。

「京本？あ、うちの副医院長？」

「の息子」

「あー、病理の坊っちゃんね。それが何で？」

院内でも二世だけど、出来が良いって噂だったななんて思いながらピザを一口かじる。

「…婚約してんだと」

「え、マジか。誰と？」

「A」

「…は？」

弟の言葉にピザが口から出そうになった。

「Aとそいつ婚約してんだってさ」

「はぁっ？！マジで？！あ！だからあんなに肩入れしてたのか！」

確かに副医院長、めちゃくちゃ丁重に頼んできたな。

「…へぇ。大事にされてんだ」

その顔があまりにも切なく見えて、

「…おい、弟」

「…何」

「…お前まさか」
　
「…何ですか」

「Aちゃんのこと…」

思い切って、気になっていたことを聞いてみた。

「…俺も知らなかったんだけどさ、こんなショックってことはそういうことなんじゃないの」

弟はレモンサワーをぐびっと飲んだ。

「おいマジかよ…あの坊っちゃん、よくも弟の恋を…」

「…別にAが幸せなら良いんだけどさぁ」

そう言いながらレモンサワーをストローで混ぜる弟。

「…嘘、何、幸せそうじゃないの？」

「…まぁ、俺が見た感じは。しかも親同士が決めたって言ってたし」

「…ワンチャンあるな、これは」

「…どうだか」

俺がそう言っても頑なな弟。

「てか、何でAちゃんなわけ？大学んときも入社してからもいなかったじゃん」

弟の色恋沙汰なんて、松村(俺の婚約者ね)以外聞いたことなかった。

「…似てんの」

「…え？」

「…姉さんにちょっと似てんだよ」

「おっま、それはAちゃんに失礼だろ！」

弟の衝撃の告白に俺は珍しく声をあらげた。

「え、今それどういう気分で言ってるの？姉さんのことディスってない？」
　
「いや、そうじゃなくて！初恋の人に重ねるのはかわいそうだろ」

「…別に重ねてるわけじゃないよ。良い意味で似てんの」

「あー…。まぁ、ほら、聞かせてみ？…あ、涼太何かつまみちょうだい」

…あれ、なんかデジャヴ。