僕の隣 (ページ1)

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1．10年ページ1

＜SIDE北斗＞

「涼太、俺ピザちょーだい」

「それ聞き飽きたよ。別の注文したら？」

「おい、俺客だぞ」

「はいはい」

地下にあるお店のドアを開けながら入ってきたしょっぴーと、カウンターの中から呆れた様に笑う舘さん。ちなみに俺はこのやり取り見るの飽きてるけど。

「悪い、弟。会議、長引いちゃって」

「ううん。舘さんが相手してくれたから。深澤先生の代理？あの人いまパリだっけ？」

片手を顔の前に立て謝罪のジェスチャーをするしょっぴーを見ながら、俺はワインを一口飲んだ。

「そう。学会。明後日戻ってくんだけどさ、こんなん送ってきた」

「え、フランスパン食べてんじゃん。エッフェル塔行ってるし。仕事してんの？」

「ほんと嫌味な人だよな。後輩に仕事押しつけといてさ」

「相変わらずだね、深澤先生」

しょっぴーのスマホの画面に映るただの観光客にしか見えない深澤先生を見ながら、俺は笑った。

「弟は？仕事どんな感じ？」

「特に変わりなく。出世争いとか興味ないからのびのびやってる」

「のびのびやってて病院の設計任されるか普通？」

「俺一人でやるわけじゃないから」

「ふぅ～ん。ま、弟に設計してもらえるんなら、うちの病院も安心だわ」

そう言って、ふはははと笑うしょっぴーの横顔を見ていると、お酒も入っているせいかしみじみとした気分になってしまった。

10年。俺たちが出会ってから流れた月日。

高校3年生だったしょっぴーはもう28歳で、精神科医として、そして深澤先生の一番の愛弟子としてバリバリ働いている。
俺も俺で学生時代からお世話になってた建築会社に入社し、無事に1級建築士の資格を取得。大きな建物の設計も任されるようになってきた。

「で、そっちは？式の準備はうまく言ってる？」

「うん。ぶっちゃけ100パーあいつに任せきりだけど。この前も二人で色んな式場見に行ったけど俺あんま違いわかんなかったもん。今度はタキシードとドレスの試着だってさ」

分からないとか言いつつも、会うたびにしょっぴーの左手の薬指には指輪が輝いている。

姉さんとしょっぴーももちろん相変わらずで、交際10年目にして結婚する。
ちなみに姉さんはお兄さんである照さんと同居中。大阪に住んでいて、しょっぴーとは遠距離だ。

「で？」

「え、何？」

「いや、何か頼み事あんでしょ？」

「は、はっ？何で？」

俺の質問に動揺したのかサラダの葉っぱが口から出てるしょっぴー。汚い。