10. 家族だから ページ10
＜SIDE北斗＞
「ん…？…あれ？」
翌朝、目が覚めると何故か目の前に姉さんの寝顔があった。
「…ああ、そっか」
布団から少し出た姉さんの手を握る自分の手をぼーっと見ながら、
昨日あのまま部屋に戻らずにベッドの横で突っ伏して寝たことを思い出した。
「てか口半開き…」
規則正しい寝息を立てる半開きの口にくすりと笑ってしまった。
「わ、やっべ」
ふと時計を見ると、朝7時。
朝練に遅刻する。
居残りはもうごめんだ。
そう思って、急いで準備しようと立ち上がった時だった。
「んんっ…」
姉さんが引き止めるように俺の手を強く握る。
「…姉さん？」
眉間にシワがよっていて、まるで赤ちゃんがごねているみたいで自然と笑みがこぼれる。
「…ほ、くと」
掠れた声で俺を呼ぶ姉さん。
「俺、朝練。行くわ」
「…あぁ…んー…」
俺がそう言うと、姉さんは寝ぼけたまま素直に手を離してくれた。
「また放課後な」
姉さんの頭にぽんと手を置いて、部屋を出ようとドアに向かう。
すると
「…ほくとー」
姉さんが俺を呼んだ。
「ん？どした？」
ドアからベッドの方に戻り、しゃがんで姉さんと視線を合わす。
「ごめんね、いっつも」
姉さんは一言、ぽつりとつぶやいた。
「…何で姉さんが謝るの？」
「…また迷惑かけた」
「…はぁ、姉さん」
姉さんの返事に俺はため息をついた。
「毎回毎回言ってるけどさ、迷惑なんかじゃないよ。俺ら家族でしょ？」
「…でも」
「でも、じゃない。それから、ごめんねじゃなくて、ありがとうが聞きたい」
「…」
俺の言葉に戸惑いを見せる姉さん。
「…ほら」
「…ありが、と」
少し催促すると、姉さんは少し困ったように言った。
「ん。それでよし」
それを聞いた俺はドアを開けて、姉さんの部屋を出た。
「…はぁ」
ドアにもたれかかって、ため息をつく。
そう。家族なんだから、俺と姉さんは。
家族、だから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 593人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「渡辺翔太」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん！完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました＞＜またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります！ (2019年9月9日 22時) (
レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました！こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました！ (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん！お読みいただきありがとうございました！面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線？みたいなのが見えてくると思います！新作も楽しみにしていただけると嬉しいです！ (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます！ (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん！ありがとうございます！心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小鳥 | 作成日時：2019年8月10日 21時
