36. 思い出せて… ページ36
<SIDE北斗>
「…とっ、ほくと!」
大好きな声がして目を開けると、なぜか姉さんが心配そうにこっちを見ていた。
「...ね、さん?」
声が掠れてうまく声が出ない。病室で姉さんを待っている間に寝てしまったようだ。
「うわ、体いってぇ…」
「ばか」
椅子に座って寝たからか体が痛くて伸びをすると、急に姉さんが抱き着いてきた。
「は?」
「びっくりしたじゃん…起こしてもびくともしないんだもん…」
そう言って俺の肩に顔を埋める姉さん。
「…夢、見てた」
「夢?」
「ガキんときの夢」
「…そっか」
俺の言葉に少し俯く姉さん。
「何、心配した?死んだかと思った?」
「…うん」
「何何、今日はやけに素直じゃん」
にやけた顔を見られないように、姉さんをぎゅっと抱きしめる。
「うるさい。寝るなら帰って寝なよ」
「姉さんの顔、見てから帰ろうと思って」
そう言って離れる姉さんの頭をなでる。
「…ふぅん。終わったからもう帰っていいよ」
姉さん俺の隣あった椅子に座った。
「…大丈夫だった?」
「うん。まぁ、深澤先生話長かったけど大丈夫だったよ」
「いや、そっちじゃなくて」
「へ?」
俺の質問にずれてる答えを一生懸命話す姉さん。
この人なんか抜けてるんだよな。
「姉さんの…心…っていうか…」
「…あー…」
「…思い出したんでしょ?全部」
「…うん、まぁ」
俺はどこを見たらいいか分からなくて、膝の上に置かれた姉さんの手を見ながら言った。
「…だから、大丈夫?」
「…うーん…色んなこと思い出して、一気に話したからちょっと疲れちゃったかも」
「…そっか」
俺は姉さんの言葉に頷いた。
「…ねぇ、北斗?」
「ん?」
「…ありがとう。守ってくれて」
姉さんはそう言っていつもの笑顔で言った。
「…え?」
「私が事件のこと思い出さないように、本当の姉弟じゃないこと隠してくれて、
ずっと私のこと守ってくれたから。だから、ありがとう」
「…」
何を言えばいいか分からなくて、黙ってしまった。
「…姉さんさ」
少しの沈黙の後、俺は姉さんに言った。
「ん?」
「…思い出せて良かった?」
「え?」
「…本当の家族のこと、思い出せて良かった?」
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小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん!完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました><またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります! (2019年9月9日 22時) (レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました!こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました! (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん!お読みいただきありがとうございました!面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線?みたいなのが見えてくると思います!新作も楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます! (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん!ありがとうございます!心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥 | 作成日時:2019年8月10日 21時