18.期待 ページ18
<SIDE北斗>
「ありがと、北斗。もう大丈夫」
昇降口を出て、姉さんはぽつりとそうつぶやいた。
「そ」
「…うん」
俺は姉さんの手を離した。
「…北斗の言うとおりだった」
「…何が?」
「渡辺くんが実は学年1位の秀才だったこと」
「…ああ」
ついにバレたか、ざまあみろなんて思ってたけど、
そう言う姉さんの顔がどこか寂しそうで、そんな気持ちにもならなかった。
「…私バカみたい。渡辺くんの役に立ってる、
渡辺くんを助けてあげてる、なんて思ってたの」
「…姉さん」
「でも全然そんなんじゃなくて。私の独りよがりだったみたい。最低だよね、私」
「違う」
「え?」
突然立ち止まった俺を見上げる姉さん。
「何でそうなるわけ?嘘ついてたあいつが悪いのに、何で姉さんが自分のこと責めるの?」
「…北斗…」
「最低なのはあいつで、独りよがりなのもあいつ。姉さんは何も悪くない」
「…そう、かな」
「あいつみたいなやつのせいで姉さんが傷つくのマジ耐えられないんだけど」
そう言って拳を握りしめながら俯いていると、ふわっと姉さんの香りが広がった。
「…もういいよ。ありがと。北斗」
自分より15センチも高い俺の首に手を回して抱きしめてくれる姉さん。
ガキの時からそうだった。
こうして時々、自分が見えなくなると、姉さんは必ず俺を抱きしめてくれた。
ふわりと香る優しいにおい、背中を規則正しく叩いてくれる小さな手。
その全てが俺を落ち着かせてくれた。
「…あのさ」
「…ん?」
「…俺もうすぐ18だよ?」
「…だから?」
俺の言葉が理解できない様子の姉さん。
「…だから」
「…うん」
「…俺」
「え、ちょ、北斗、ぐるしっ」
「…こんな風に力が強いよってこと」
「分かった分かった!く、くるしっ!」
ぎゅっと力を込めて抱き寄せると、ギブギブと俺の背中を叩く姉さん。
「分かればいい」
「はー?何それ」
離してあげると、ふふっと笑っていていつもの姉さんの顔に戻ってて少し安心した。
「コンビニ行こ。私が奢るよ」
そう言って先を行く姉さんの背中を見ながら、俺も歩く。
姉さん、さっき言いかけたのはそんなんじゃないんだ。
俺、もう18だよ?
俺、期待しても良いの?
そうやって俺だけを抱きしめてくれるのは、期待してもいいってことなの?
俺は、姉さんのこと、想っててもいいの?
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小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん!完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました><またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります! (2019年9月9日 22時) (レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました!こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました! (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん!お読みいただきありがとうございました!面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線?みたいなのが見えてくると思います!新作も楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます! (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん!ありがとうございます!心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥 | 作成日時:2019年8月10日 21時