君の隣

24．安心できない ページ24

＜SIDE北斗＞


「…はぁ…」


病室のドアを閉め、寄りかかる。
こみ上げる怒りを抑えるように、俺は深く息を吐いた。


それでも目の前で眠る姉さんを見ると、心が安らいだ。


「…ごめん、姉さん」

俺はベッドの近くの椅子に腰掛け、姉さんの頭を撫でた。

「…約束したのに…守れなかった…」

そうつぶやきながら、額に残った痛々しい古傷に触れる。


すると


「…ん…」


傷が痛んだのか姉さんが眉間にしわを寄せた。


「…姉さん？姉さんっ」

「…ん…ほ、くと…？」

ゆっくりと俺の名前を呼ぶ姉さん。

「ごめん、痛む？」

「…ううん…大丈夫…」

そう言って姉さんはベッドから起き上がった。俺はそんな姉さんを支える。

「…また病院？」

「…うん。でも大丈夫。そんなに長引かないって、深澤先生言ってた」

「…ああ…そっか…私…」

姉さんは自分に何が起きたのか思い出したのか、つぶやいた。

「…びっくりさせちゃったかなぁ…」

「…へ？」

「…渡辺くん、ちゃんと謝ってくれたのに…」

「…姉さん…」

悔しそうな顔で俯く姉さんの手を握る。


「変な意地張っちゃったから、こんなことに「違うよ」


俺は姉さんの言葉を遮り、ゆっくり腕を引いて抱き寄せた。


「姉さんのせいじゃないよ。姉さんは何も悪くないから」

「…でも「大丈夫。俺が強く言っといたから」

「…北斗」

俺が離れると、姉さんは不安げな顔でこちらを見た。

「今は何も心配しないで休んで」

「…うん、ありがとう」

「明日また迎えに来る。午前中に深澤先生のカウンセリング入ってるから」

「…うん」

「じゃあね」

そう言って俺は姉さんの頭に手を置いて、病室を出た。


「…はぁ…」


どうしてだろう。


姉さんが起きたはずなのに心の底から安心できない。


脳裏にあの、渡辺という人の姿がちらついた。

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