彼の想いは届かない。【ヤンデレ】

中島敦 ページ10

「敦君、これ手伝ってくれる？」

そういって僕に書類を渡してきた子の名前は檜山A、

僕と同じ、孤児院の出だ。

そして僕の、好きな人。

・・・・・・
「太宰さん！もう、またサボりですか？」

「国木田さん！社長がお呼びです！」

「賢治君、この前の野菜おいしかったよー！」

「谷崎さん、ここの書類って・・・」

「与謝野さん、頼まれていたカルテです！」

てきぱきと仕事をこなすAに思わず頬が緩む。

仕事を頑張る彼女は本当に癒しだ。

本当に愛しい。

でも、＿＿僕以外の名前を呼ぶなんて、

＿＿＿＿＿そんな声は、＿＿要らないね？＿＿＿

僕は微笑みながら思った。

・・・・・・
「あーつーしーくーん！」

へなへなと、彼女が僕の机に倒れ込む。

「どうしたの？」

「なんかね、国木田さんに今日敦君と残業って言われた！」

「ええっそうなの！？」

「うん・・・頑張ろう・・・終わったら絶対にのみにいく！」

「そうだね。」

嗚呼、愛しい声、これが聴けるのは後ちょっと、

ちゃんと録音しておかなきゃ。

「よし、頑張るぞ！」

僕は静かに笑みを浮かべた。
・・・・・・
「・・・・・・」
まじめにパソコンに向かい、仕事をするAに気づかれないよう、

息を殺して背後に忍び寄る。

「・・・A」

虎化させた腕をのどに近づかせながら名前を呼んだ。

「なーに？」

僕に向けられたその笑顔は一瞬で恐怖と苦痛の表情へと変わる。

＿＿＿虎化した腕を＿彼女ののどに＿＿食い込ませる。＿＿＿＿

「＿＿＿＿＿＿＿＿っっ！！！！！！」

言葉にならない悲鳴がAからあがった、

これで声は僕のモノ。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿次は目かな？

そう思いながら僕はAに微笑んだ。

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