【図書館戦争】今日も会いに行きます (ページ1)

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大学の授業が終わって家に帰る途中、前方に大きな図書館が見えてくる。

『武蔵野第一図書館』

通い始めて３年になる図書館だ。

慣れた足取りで自動ドアを通ると私が来るのを待っていたかのようなタイミングで一人の図書館員が近づいてくる。

「今日はなんの課題が出たんだ？」

堂上さんというこの図書館で働いている人で、私がここにくる理由。

ネットというものがあり、わざわざ図書館へ行かなくても大体の事が知れる世の中になったけれど、この人がいるから私は毎日のように足を運んでいる。

「今日は、日本の森林についてなんです。グラフとか図が多く載ってるものがいいんですけど」

私の要望を聞くと参考になりそうな本が並ぶ棚へ案内してくれて、いくつかページを捲って中身を確認した後２、３冊渡してくれる。

「これは統計が多く載ってるから、こっちと照らし合わせるといいんじゃないか。あと、これは……」

堂上さんはいつも欲しい情報が載った本を選んでくれる。

中身がどういう風に書かれているのか解説してくれるので読みやすい。

本を受け取った後、一人用の机を借りて課題となったレポートを書く。

「あ、これ……知りたかったやつだ」

私が何を知りたかったかなんてあの人は知らない。

それでもなぜか毎回的確に本を選んでくれるのが嬉しくて、ときどき勘違いしそうになる。

平日の閉館時間は午後７時。

私は決まって１時間前、午後６時にここを出ている。

それは生活のリズムの問題もあるけれど、一番の理由はけじめをつけたいから。

私は堂上さんに恋をしている。

でも、私はあくまで一般の利用者でしかない。

それを自分で忘れないように、ルールを定めた。

６時までに書ききれなかったときは、本を借りて家に持ち帰る。

どうやら今日は借りて帰らないといけないようだ。

カウンターで手続きをして汚れないように鞄に入れて図書館を後にする。

「また図書館に寄ってきたの？」

「うん、まあね」

「珍しいわね、あんたがこんなに長続きするなんて」

家に帰るとキッチンから母が顔を覗かせた。

「よっぽどのイケメンがいるのねぇ。私も今度行こうかしら」

「もう……お腹空いた、ご飯！」

「ふふ、はいはい。今作ってますよ」

さすが親子というべきか、考えることはだいたい同じである。

確かに堂上さんはかっこいいけどそれだけじゃないんだ。

誰に聞かれたわけでもないのにそんな言い訳をしながら、荷物を置きに部屋へ戻った。