とある思考のとある人生 (ページ14)

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だからページ14

診療所の周りを警備し始めて１週間が経過した。確かにドクターの言っていた殺気は感じる。しかし肝心の気配が掴めないのだ

『どう思う？』

瓦礫の山に背を凭れさせながらAはそうテクに聞いた

「わかんない。だって、こんなの初めてだよ」

テクは頬を膨らませながら不機嫌なのか、唇を尖らせながら答える

「こんなめんどくさい仕事、放棄しちゃえばいいのに」

『ドクターの頼みならしょうがないよ～～まあ、別にミーだけでもこなせる依頼だし、キミは先に還って自由にしてても……』

「そっちの方がつまんないよ！しょうがないからもうちょっとだけ付き合ってあげる」

その時、急にテクが目を見開いた。勢いよく立ち上がって走り出す

『どうしたの！』

「視線だよ！きっとあの殺気の持ち主だ。仕留めちゃおう」

『キミの能力は戦闘向きじゃない。ミーに任せて～～キミはドクターのところに行ってこのことを知らせて！』

「わかった！」

逆方向に走り始めたテクと目が合った。翡翠色の瞳が揺れている

「どうか、無事で」

その祈るような声音に立ち止まりたくなった。それほどまでに彼の感じた視線というのは、殺気に溢れていたのだろうか

足に力を入れ直して地を駆ける。空気中に舞っている塵が目に入って少しだけ痛かった

さあ、彼の指さしていた方向へ。ミーはまだ気配どころか視線すら掴めていない

自分の存在をそこまで気取らせないなんて、相手はどれほど強いのだろう。きっとドクターじゃなんとかできなかった

ドクター。ミーの初めての家族。ミーはあの人が大好きだ。あの人が子供しか愛さないというのなら、ミーは永遠に子供でいよう

ミーはあの人を護りたいのだ

しばらく走り続けてふと違和感に気が付く。敵の気配が一向にしない

『まさか……』

どこかで撒かれて、診療所に向かった―――？

その可能性に気が付いた瞬間に肌が粟立った。あの場所には、テクとドクターがいる

廃屋の壁を蹴って今来た道を戻りはじめる。どうか、どうか、間に合ってよ。ミーは何も喪いたくない。失くすのは怖い

だって、ミーは何もなくしたことがないのです。確かに性別は奪われたけど、それだけだった。ミーはドクターとテクのお蔭で食べ物も、住むところも、身の安全も確保できていた。孤独にだって襲われることがなかった

この幸せを壊したくはない。絶望なんて、一生したくない

間に合え、と叫びながら日の沈む流星街を駆け抜ける