自分が ページ1
「なんで？」
悲し気な少年の声。聞きなれてしまった声。その声を聞くと自分も悲しくなってくる
「僕が悪いの？愛が足りなかったかい？僕が嫌いなのかい？」
うるんだ瞳の中に歪んだ自分が映っている。自分だけがその瞳の中の住人だ
「……答えてくれないんだ。じゃあ聞くのはやめにするよ」
手の中にあるメスは汗でぬるんでいた。なのに手から離れない。手が強張ってしまって力が抜けない
口角を無理矢理上げたら目から涙が出てきた
もうすぐ、終焉がやってくる
『……ミーが生きるため。キミは、ミーの敵なんだ』
悲しくも虚しくもない。そんな人間らしい感情を持つには何かが欠けている
それでも生きたいと願う欲望だけは持ち続けてきた。だから今、自分はこの愛しい人を殺そうとしている
「いっぱい、苦しんだ？僕を殺すと決めるまで何回、世界を呪った？」
『……即決だったよ。生きるためだから』
「君らしくて安心する。安心して、死ねる」
色素が薄い肌に刃を立てる。其処から血が漏れだして、命が同時に漏れているような気がした
「死ぬのは怖い。今すぐそのメスを奪い盗ってキミに突き立てて僕が生きたい」
彼がそうしない人間なのは分かっていた。そうするための原動力を彼は持っていない
人生に、世界に、自分に絶望した彼には生よりも死の方が魅力的だ
「大丈夫。世間は僕達を受け入れないけど、世界には僕達の生きられる場所がある」
『……そんな希望をミーに植え付けるな。とても吐きそうになる』
血が流れる。命が流れる。ミーが流れる
「じゃあカウントダウンを始めてあげる」
魔法の言葉。呪いの暗示。その言葉に何回も救われてきた
何回も、手を汚してきた
「さん」
メスを持つ手に力を入れて
「にー」
白い喉に突き立てる
「いち」
刃を血管に突き立てて
「 ぜ ろ 」
終焉を抱きしめる
これでもう何も怖くない。恐れることも怯えることも絶望することもない
大丈夫。ミーは幸せだ。感情の煩わしい部分を全て捨てることが出来たのだから
『……くずれる』
目の前の目玉が勝手に床に落ちた。次に腹が独りでに裂かれて内臓が零れ落ちる。まるで宝石のような輝きを持ったそれはすぐさまに腐臭を漂わせた
ああ、人生は楽しいなぁ。なんてミーは幸せ者なんだろう。ミー以上に幸せな人はきっといない。いるはずがない
誰かミーを殺して、と呟きながら自分の首を絞める
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イチゴ(プロフ) - レナ さん» 本物の姉の前ではかわいい癒し系になるのでご安心を！ (2016年7月14日 18時) (
レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - “お姉ちゃん”って……。というかテクくんの毒舌にびっくりです。かわいい癒し系だと思ってた…！ (2016年7月14日 1時) (レス) id: 0a6acecd9c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - 藍琉さん» 私なんぞの作品を読んでいただき、感謝の気持ちしかありません･･･！ありがとうございます (2016年6月25日 21時) (レス) id: 981baac287 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉 - イチゴさんと聞き即作品を読み始めたのは私です。パイオンの過去にドクターが出てくるとは…こちらも読ましていただきますね！更新楽しみにしてます。 (2016年6月25日 20時) (レス) id: d2e4b0bb58 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - シロさん» コメント、ありがとうございます！そう言っていただき嬉しいです (2016年6月22日 16時) (レス) id: ecd6285e40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
