欠けた月の残りを探して

恵まれている ページ46

あたしは教室に荷物を置いて教授を探す

夜遅くに絵を描く許可を取らなきゃ

あの題材を描くためにはどうしても夜でなければならない


廊下を見回してみると向こう側に教授がいるのが確認できた


『あ！教授、頼みがあるのですが』

「なんでしょう？」

『夜に大学内をうろつく許可をください』


頭をガバッと下げる


「それは突飛な話ですね。何故ですか？理由をお聞かせ願いたい」

『絵の題材が夜にしか現れないんです。お願いします！』

「ほう……しかし、そのことを私だけで決めるわけにはいけませんからねぇ……他の教員達とも話し合う必要があります」

『そうですか……』

「出来る限りのことはしますので、少し時間をください」

『！！ありがとうございます』


あぁ、あたしは恵まれてる


少し上機嫌になり、教室に戻る

今日の講習はイタリア語と古文だ


もう少し待てば教授が入ってくるだろう


「おはようございます。今日はオレが授業をしますので、よろしくお願いします」

「黒尾先生だ―――ッ！」

「オレ、今日は寝ないぜ！」

「あたしも―――ッ！！」


その“黒尾先生”とバッチリ目が合ってしまう


……イヤな予感とはこのことだろうか



(悪寒が全身を駆け巡る)

(授業が終わった時、あたしはどんな状況になってるだろうか……)

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