欠けた月の残りを探して

意味はあるのか ページ33

「そういえばお前、カバンの中に何を入れているんだ？」

『え、普通に筆とスケッチブックとシャーペンに鉛筆に……』

「聞き方が悪かったな。今日、新しく入れたものは？」

『新しく……えーっと…………』


ふと、さっきの本のことを思い出した


『この本のこと？』

「……あぁ、これだ。どこで手に入れた？」

『古本屋でもらちゃった』

「貰った？」

『うん。店員さんがお金はいらないって言ってそのまま追い出されちゃった』

「金を払いに店に戻らなかったのか？」

『そうしようとしたんだけどね――――……………』

「？」

『消えちゃったんだよ。その店』

「は？消えた？」


そう言うと腕を組んでなにかを考え始めるコイツ

そして、本をパラパラと捲り始めた


「……念だな」

『は？』

「本に念がかけられている」

『マジか。じゃあ、店が消えたのも念？』

「おそらくな。ところで、お前はこの文字が読めるか？」

『無理。アンタは？』

「オレも無理だ。何かの条件が発動しないと読めないようにでもなっているのか……」

『へぇ〜』


今更だけど、なんであたしはこの本が欲しくなったんだろう


わからない



(今日、この本に出会ったことに意味はあるのだろうか)

(少しだけ胸の奥がざわついた)

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