欠けた月の残りを探して

騙されるな ページ30

「黒尾先生って変わった名前ですよね！」

「祖父がイタリア人だから。この名前は祖父につけてもらったんだ」

「付き合ってください！」

「ハハ。君が卒業したら考えるよ」


「「「「「「キャア〜〜〜〜〜〜ッ！！！！」」」」」」


『うるさい……』

「黒尾先生めっちゃ人気だな。てか、あの人この前カフェに来てた人だよな？」

『うん。そうだと思う』

「オレ達、縁があったりして！」


いや、なくていいんだけどね


女子達よ、騙されるな

ソイツは性格最悪だから


あたしと涼はみんなより一足先にアトリエに向かう


『どんな絵、描こうかな〜』

「また描くのかよ？体壊れんぞ」

『大丈夫でしょ。あぁ、でも題材が決まらない』


唸りながら何を描こっかな〜なんて考える


『決まらない……』

「イケメンなオレでも描けよ」

『いいけど２万払え』

「断る」

『チッ』

「楽しそうですね、何を話しているんですか？」


気づいたら後ろにヤツが立っていた


「あ、黒尾先生。描く題材が中々決まらないんですよ〜」

「う〜ん……今まで描いてきたものとは別なものを描いたらどうでしょ」

「ほら、聞いたかA。ここはオレの顔描いとけって」

『イヤだ。絶対ヤダ。絵具が勿体ない』



目の前のコイツはニコニコしながらあたし達の様子を見ている

そのことに無性に殺意が沸いた



(コイツは何をしに来たんだ)

(今日の夕食は抜きにしてやろう)

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