ただ愛していただけなのよ ページ46
軽やかなテンポの鼻声がその部屋に放り出されていた
どこか楽しそうなその曲を紡ぎながら彼女は目を開ける
「そろそろ……かしら」
これで最期。今回で私かAのどちらかは必ず死ぬ
――――あるいは両方かしら？
そう呟いて女は声を立てて笑った。今までの人生でこんな愉快なことがあっただろうか
クロロ様。聞いてくださる？私はあなたを確かに愛して、そしてそんなあなたが愛しているAを憎んだわ
でも私の中にはもう愛がないの。Aに対する憎しみがあなたへの愛を喰らってしまったのよ
クロロ様。あなたが憎い。私に救いの手を伸ばしたのに、光を見せてくれたのに。それを気まぐれだと言ってまやかしに変えてしまったあなたを殺したいのよ
だから私はあなたからAを奪うの。愛する存在を奪われることがどんなに苦しくて死にたくなるか。味わってほしいのよ。私がまだ体験していない絶望に浸ってほしい
それが私からの贈り物。あなたが許された唯一の贖罪
大丈夫。悲しむことはないわ。だってあなたが憎むであろう私は、きっとその頃には死んでいるでしょうから
「……もう一度、あなたの腕の中で泣きたかったわね」
叶わない夢は呪いと同じだということに気が付いたのはいつだっただろうか
私はAだったはずなのに。Aはとっくの昔に死んでいたはずなのに
どうして私のことを捨てた癖に、Aは救って今も尚あなたの隣にいるの
答えなさい。私とAのどこが違ったのか。そして、私を殺しなさいよ
なんで私はあなたの人生に入り込めなかったの？
どうして私は物語の主人公に為れなかったの？
クロロ様。自覚して。Aが死ぬのも、私が死ぬのも、あなたが絶望するのも
全てあなたのせいなの。最初から私など救わなければ良かったものを、あなたは一瞬でも救ってしまったから
「愛してさえくれれば良かったのよ…………」
拳を胸の前で抱きしめる。この手がこれから何もかもを壊すのだと思うと愛おしくなった
「今から、行きますから」
もう震えも絶望も憎しみもない。ただこの殺意だけで身体を満たす
部屋の灯りが消えた。そして、それと同時に彼女はその場から立ち去ったのだった
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RT - とても面白いです！三年も書いていたんですね！このシリーズ大好きです！ (2018年9月3日 23時) (
レス) id: da0e7ea281 (このIDを非表示/違反報告)
rua - ちょ〜〜面白いです。 また新しい作品楽しみにしてます。 応援してます！ (2016年10月28日 15時) (レス) id: ce0d20423e (このIDを非表示/違反報告)
イチゴ(プロフ) - アスカさん» とりあえずは完結させようと思っていたところまで物語を書き、そこから繋げて行こうと思っています (2016年4月25日 18時) (レス) id: e736e9b02c (このIDを非表示/違反報告)
アスカ - 夢主vs女が楽しみすぎる！！ところで、本誌の番外編と言うのは予定通り作品を完結させてから別枠で書くのか、作品に組み込ませて書くのか決まってましたら教えていただけますか？ (2016年4月25日 0時) (レス) id: 62f7d68aec (このIDを非表示/違反報告)
藍琉 - はははっw某戦略シュミレーションゲームのうちの初期刀と同じかーwそういやちゃんとした意味は調べたことないなー…まじかよ(何個か特徴当てはまる)…かもしれないです。カルト…！！(ノД`)°。 (2016年4月20日 23時) (レス) id: 97ccf20f00 (このIDを非表示/違反報告)
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