もう一人の銀髪の回想 ページ36
『怖くない、怖くないぞ。何を恐れる必要があるのだ。お前の片割れはこの私。それだけでは足りぬか』
ガラス細工をそっと指先でなぞる時のような優しさをもってA姉はあのイル兄の背を摩っていた。
自分と同じ銀色を持つ姉は自由奔放で、明朗快活で時にひどく傲慢だ。そんな人があんな慈しむような笑みを浮かべられるだなんて生まれてからこの六年間、想像すらしていなかった。
息を潜め、気配を消す。そっとしゃがみこんで近くにあった木に身を添わせてその光景を覗き込む。
自分の知っているイル兄はあんなに不安そうに瞳を揺らしたりしない。その奥底に計り知れぬ闇を溜め込み、確固とした自信と共にある姿しか見たことがない。
『もう大丈夫か？……そうか』
イル兄は最後にA姉に頭を撫でられた後、屋敷の方向へと姿を消した。見てはいけないものを見てしまったような気がして、心臓が早鐘を打つ。いけない、こんなに肌を粟立てていると
『キル！出てこい』
見つかってしまう。
「……ごめん」
『何を謝る必要がある。謝罪ではなく感謝ならまだ分かるがな。喜べ！お前は兄の新たな一面を知れたのだ』
「オレ、イル兄のあんなとこ初めて見て」
『当たり前だ。イルミの“あれ”は私の前でしか出てこない』
秘密にしてくれるか？と姉は唇に人差し指を当てながら首を傾げた。
『あいつも人だ。お前の前では兄として振舞っているが、儚い部分もある。見逃してやってくれ』
「……A姉も？」
『え？』
「A姉も、弱いとこあるの？」
すると何がおかしかったのか、姉は噴き出して笑い始めた。笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指で擦り、肌に伸ばす。
『キルア！私をなんと心得る。忘れたのならば教えてやろう。私は唯一絶対にして不変の神だ！』
「意味わかんない」
『言葉の通りさ！血の繋がりも性差も超えた存在がこの私だ！』
「じゃあお願いすればナニカみたいになんでも叶えてくれるの？」
『それは罷り通らぬ』
だったらA姉が神様だなんていうのは出鱈目だ。だって本に出てくる神様は世界を作ってしまうようなすごいもので、人の願いなんて簡単に叶えられる。
「嘘つき」
『勘違いをするでないぞ。君のお願いを私が叶えないのは君が私を信仰してないからだ』
「じゃあ信仰する！」
『それもダメだ』
「なんで！」
やっぱり神様なんかじゃないから誤魔化そうとしているのだと思い、頬を膨らませた時だった。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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