黒い花をやろうか。 ページ33
手に入れたはずなのにするりと腕の中から抜けていってしまったあいつは何をしているのだろうか。
もう手に入らないのだろうか。それじゃあいけないだろうと頭の中で声がする。欲しいなら盗れ。それが盗賊だろう。
だけれども。身体をどんなに雁字搦めにしても。死んだ方がマシだと思えるような痛みを与えても。手に入らないのが奴だ。
そういう奴を、欲してしまったのだ。
この飢えはどうすればいい。あれからどんなに人を殺しても何を盗っても違う違うと血を吐いて叫ぶばかりだ。どれもこれもお前には程遠い。
奴がいた時に共に歩いていたような暗闇。同じもののはずなのに、酷く無価値でくだらないものに成り下がった誰がいるかも分からぬ路地裏に身を滑り込ませる。
お前のせいで落ち着くはずの暗闇さえ駄目になってしまったじゃないか。どうしてくれる。知らないぞ！とお前は言うのだろう。ああ、本当に。
欲しい。
単純な感情しか知らないし、それ以上のものなどいらない。今までもこれからもそう生きるはずなのに、その単一な欲に振り回されている自分はあいつ以上の阿呆なのだろう。
遠く上、ビルとビルに切り取られて四角くなった空の中で雲が風に流れた。あいつの瞳の色をしている月とやらが顔を出す。なんだ、三日月か。そんな細い輝きじゃあいつには劣る。
そう思いながら天を見上げていた時だ。
扇のように髪を一瞬広げて、誰かがビルの上から飛び降りる。軽やかに、音などという無粋なものを立てずにそいつは目の前に降り立った。
「ハハ」
この光景は見たことがある。いつかクロロが読んでいた神話の挿絵で。
「お前は神か」
まったく、なんてタイミングで現れやがる。だからお前は最高なのだ。
『出会った時からそう言っているだろう！相変わらず君は愚民として甘んじているようだな』
手を引かれる。暗い昏い冥い儚い路地裏を駆け抜け、その先へ。
『改めて自己紹介をしよう！私はA＝ゾルディック。ゾルディック家の長女にして絶対不変の神である！』
「フェイタン＝ポートオ。幻影旅団団員。お前を欲す！」
『私を人たらしめる可能性があるのは君だけだ！』
「
冒涜し、零落させたのに。それでもこいつは何よりも価値がある。
『誇れ』
「誇れ」
声が重なる。言葉などという信じられないものはこうやって使うのだと、教えられている。そして教えている。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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