有能、実力3 ページ8
彼_____________ゾムは、煌々と瞳を肉食獣の様にギラつかせながら、ナイフをしきりに手で弄ぶ。
間合いとチャンスを伺っているのだろう。
私の表情、一挙一動まで舐めとるように観察している様だ。
私も同じくゾムの動きを伺い自身の息を殺す。
聴覚と神経に集中力を注ぎ、緊張状態に持ち込む。
彼の、ゾムの、呼吸音、回数、脈拍数、瞳孔の動き、髪の毛の揺れ、足音。
全て。
何から何まで把握し掌握する様に耳をそばたてて、身体を過敏にする。
いつ来ても何が来ても打ち返せる様に。
ふと、音が無くなった。
ギャラリーで騒いでいた筈の幹部たちの声も何もかも。
視界も何時もより動きが遅い。
全て画面越しに見ている様だ。
ゾムがユラッと身体を空気の様に揺らめかせる。
消える。
そして私の心臓を狩りに行く。
胸の前で閃き、鈍い光を放ちながら音速で近付いてくるナイフを余裕で弾き返し、
ゾムの足を払う。
「ッ」
見開かれた瞳と同時に、ガクン、とゾムの体が体勢を崩す。
迎撃準備の出来ていない彼の首にナイフを一直線に振りかざした。
それを寸でのところで首をふってかわし、
虚空切った私のナイフが床に突き刺さる。
「いっちょ貰い!!」
声高々に声が響き、ゾムが私の頬に向け拳を放つ。
風を切り向かってくる拳を前に冷静に脳は回転する。
普通、暗殺を生業とする者は体術を行使する場合、相手の背骨を折る勢いで行う。
すなわちこのゾムの拳もそれに等しいだろう。
だが甘いな。
拳をかわし、ナイフを抜きがてらゾムの手首を取り、背負い投げを一本。
「!!ッッ」
受け身をまともに取らず床に激突したゾムは痛みに顔を歪め、呼吸が出来なくなる。
大きく背中を打つと呼吸がしにくくなる_____________人間の体の摂理である。
ギャラリーたちも息を呑み、酸素の存在を忘れてその成り行きを見つめていた。
痛みと酸素欲しさに悶えているゾムに素早く股がり、
私はニヤリと嗤って告げた。
「君の負けやで、ゾム」
そのまま私はゾム一直線にナイフを降り下ろした。
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竹の粉 - 私は作者さんのお好きにしていただければいいと思います。続編と新作、どちらでも構いません!!お待ちしております!! (2020年8月17日 23時) (レス) id: 9266b0967c (このIDを非表示/違反報告)
ココ - う、打ち切りですか。作者さんが無理だと思うなら仕方ないですが追いかけて追いかけて続きを待ってたので出来れば続けてほしいです。 (2020年8月15日 6時) (レス) id: ec11dc607a (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 「ぐう有能」この作品が通知欄に載るたび、私はいつもワクワクしていました。打ち切りなら仕方ありません。作者さんの次回作に期待に期待を重ねてお待ちしております。 (2020年8月14日 16時) (レス) id: e42f9d0a03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうふ@ヤバいやつ(プロフ) - 正直、この続編も見たいんだけど打ち切りなら仕方ないかな…でも!!次の新作すっっっごく楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2020年8月14日 0時) (レス) id: 501e08bd16 (このIDを非表示/違反報告)
鷺宮雪沙(プロフ) - 新作を出されるようなら、是非とも拝見したいです!!!元々の主さんの文章力もとても高いのに、それがさらに進化とは…!1ファンとして、早計ながらとても楽しみに思っています!! (2020年8月13日 22時) (レス) id: 50f55da2bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨菜 | 作成日時:2018年12月17日 19時