STORY*66 ページ16
7:37を表示するスマホの画面にはやっぱりゾムからの連絡は無くて、寝不足でボーッとする頭でも真っ先に浮かぶのはゾムの顔。
『…探さなきゃ』
ひんやりとするフローリングを素足で歩き、学校は休みなのに制服に袖を通してスマホだけ持って家を出る。
何かに取り憑かれた様に向かった先は学校で、昨日ゾムと侵入したルートで学校の中に入った。
2人だけで歩いた廊下は寂しかったけど、今1人で歩くこの場所は昨日と比べ物にならないくらいずっと寂しくて、ゾムが居なくなった世界はこの寂しさが毎日続くんだと考えたら耐えられそうにない。
いくら友達が居てくれても埋まらない。
ゾムじゃないと埋まらないんだ。
ゾムの教室に着きゾムの席に座る。
机の中に入れっぱなしにされた教科書を何気なくパラパラめくると、教科書の隅に私の名前が書かれている。
教科書を閉じて机に目を向けたら机には相合傘が書かれていて、その下にはゾムと私の名前が添えられていた。
『…バカじゃないの。私の事、好き過ぎるでしょ』
机の上の相合傘に私の涙が重なって雨のように濡れる。
『ゾム何処行ったの…。こんな最後嫌だよ』
ひとしきり泣いた後私はゾムの机に"好き"と一言添えた。
『良かった、誰も居ない』
ガラガラと静かに扉を閉めて入ったのは保健室。
ゾムと始まった保健室のベッドに近付くと、枕元に1つのノートが置かれていた。
誰の物か分からない物に触れても良いのか悩んだけど、好奇心が勝ってしまった私はそのノートに触れて表紙を開き、
『…っ!』
最初のページを見てすぐに閉じた。
20××年 7月5日
【Aちゃんと初めて話した。俺はこの子の事を好きになるんだろうなと確信したから、最期の日まで日記を書く事にした】
これ、ゾムの日記だ。
ゾムはわざと此処に置いて行ったんだ。私が見つける事を前提として。
読むのは怖いけど私はこれを読まないといけない。
震える指先でページを捲り読み進めると涙が溢れ出して止まらない。
ゾムの想いが切な過ぎて苦しい。
20××年 10月4日
1番新しいゾムの思いが綴られたページを前に私は1度深呼吸する。
【Aちゃんこれ見つけてくれてるんかな。読んで欲しいけど読まれるん恥ずかしいわ。俺は先に行くけど、Aちゃんはゆっくり来るんやで?すぐに来たら怒るからな。
何処に居てもどんなに離れても。Aちゃんだけを見てるで。大好きなAちゃん、ごめんな。ありがとう。またな】
貴方と始まった場所で、貴方から終わりを告げられたんだ。
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呉城 莉李。(プロフ) - さくさん» さく様コメントありがとうございます(*^^*)テスト期間はストレス溜まりますよね、お疲れ様です。番外編などでもう少し続いていくので、もしお暇はお時間ありましたら、お読みいただけたら幸いです(_ _*)) (2022年11月23日 10時) (レス) id: 7f13b99d76 (このIDを非表示/違反報告)
さく - ええ話ですね。つづきがあるかもですが、ひとまずよかったです!読むはじめて損しませんでした!テスト期間でイライラすることが多かったのですが素敵な話でスッキリしました。またちょくちょくみに来ます。大好きです。 (2022年11月22日 21時) (レス) @page22 id: 7d60a27ef9 (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ひよこさん» ひよこ様コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいお言葉ばかりで、私もひよこ様のコメントに泣きそうになりました。お時間いただきありがとうございます!もうすぐ完結なので、またお暇な時にでも覗いていただけましたら幸いです(_ _*)) (2022年10月21日 22時) (レス) id: 4f45722e46 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 初コメント失礼します。今日初めて読んだのですが、泣きました。号泣しました。こんなに心に刺さったのは初めてです。本っっっ当に大好きです、更新楽しみにしています! (2022年10月21日 21時) (レス) id: 82efcbbf1e (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ねう。さん» ねう。様コメントありがとうございます!私も自分で執筆していて完結に近付いていくのが寂しく思っていたので、そのお言葉とても嬉しいです(;;)!更新頑張りますね!ありがとうございます(*^^*) (2022年9月26日 7時) (レス) id: d747e32ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呉城 莉李。 | 作成日時:2022年9月22日 12時