【wrwrd】い ち ご み る く 【kn】

▽もしかして ページ11

俯いたAの顔を上げさせる為に両手でAの頬を包み上に向かせると、想像以上に小さな顔に力の加減に気を付けながら視線を合わせる。
今にも流れ落ちそうな程涙を溜めるAの瞳は、俺から外れる事はなく俺だけが映し出されていた。
kn「...確かにお前は男みたいな所もあるで？」
俺がそう言えば納得しているような、それでいて悲しそうな顔をするから、やっぱり原因はコレなんだとハッキリした。
kn「でもな、2人が言うようにお前は、可愛ええよ。」
言い慣れない言葉はぎこちないけど、Aには伝わった様でゆっくり涙が流れ俺の指先を濡らしていく。
女として見れないなんて思ってた自分が情けないくらい、目の前で涙を流すAは女の子でしかない。
悩んでる理由がソレなんだと思った。
男っぽい口調に、似合わないと言って隠した弱さ。
アイツの言葉に涙を流すA。
Aとアイツ等の間に何があったらAが泣く様な事になったんだ。
アイツ等は過去にAに何をした？

"私がそういうの苦手とか似合わないからさ..."
"可愛い女の子になれなくて残念だな"
2人の言葉が頭に浮かぶ。
いつから自分でそう思い始めたのか。
いつから周りに言われ始めたのか。
分からないけど、周りから言われ続けた結果今のAが存在している様な気がする。

しばらくしてAの涙が落ち着いた頃。
佳奈「...言いたくなかったら流して。いつからあんな事言われてるん？」
遠慮がちに質問をしていく櫻井に、
『もう、ずっとだよ。...慣れたはずなんだけどなぁ』
Aは無理して笑うから何故か俺が悔しくなった。
ut「...そんな事慣れたらあかんよ。Aちゃんは可愛いんやから、無視すればええんよ」
Aと視線を合わせるために屈みながら話す大先生の言葉に、
『...ありがとう鬱くん』
微笑んだAを見てほんのり頬を染める大先生。
(頬染めとるぞ、このオスが)
『3人と同じ班で良かった。ありがとう』
そう言って再び微笑んだAを見て少し安心した。
他の半班がゾロゾロ集まり出したから俺はバスを指差し「そろそろ行くか」と声を掛けて移動する。
行きはAと櫻井で座り大先生と俺で座ったが、俺はAの手を掴む。
kn「A一緒に座ろうや」
Aは驚いた顔をしながらも
『いいよ』
と短く答え、俺は掴んだ腕をそのままにバスに乗り込んだ。

きっと今の俺も、さっきの大先生みたいに頬を染めてるんだろう。

▲静まれ、心臓→←▲やっぱりまだ癒えない傷。

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