炎の花 【煉獄 杏寿郎】

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『師匠も本日のお勤めご苦労様です。帰宅の報告前に先に湯浴みを済ませてしまい、申し訳ありません。』

「Aは堅いな。風呂ぐらいで怒りはしない！帰ってきた事に気付かなかった俺も悪いのだ。それに、Aの事だ。血濡れた隊服で屋敷を汚す訳にもいかないと考えて、すぐに風呂場に向かったのだろう？」

『…は、はい。』

「ならば気に病むことは何も無い！
それより、A。昨晩、那田蜘蛛山にて、下弦の伍と対戦した癸の隊士がいる。
彼は現在、蝶屋敷にて療養中だ。」

『…っ！？癸で、下弦の鬼を倒したと…っ！？』

「いや、倒したのは冨岡なのだが。その隊士と冨岡が隊律違反をした。そのことを裁判にかけると言うことで、緊急の柱合会議だった。」

『隊律違反…？入ったばかりの隊士のみならず、冨岡様まで…？一体何を…』



冨岡様とは、数回任務を共にした事があるが、寡黙故に考えている事が全く分からなかった。
表情もあまり変わらず、任務が終われば即解散だった。


師匠からの単独任務の許可が出てから、また冨岡様との合同任務があった。
怪我で帰らされた後の冨岡様との任務だったので、
前回の謝罪と、交流を深めようと屋敷まで送って行くと申し出たのだが…


『屋敷までお送りします！前回の反省の謝罪と冨岡様と交流を深めたいのです！』

「必要ない。早く帰れ。」


と、一蹴された苦い思い出がある。

それを師匠に話したら、口数は少ないが悪い奴ではない。お館様から冨岡を笑わせろとの任務もあったが、笑わなかった！！と慰められた。

苦手な人だと思っていたが、任務を共にする度に、優しさを垣間見る事が出来た。

隠していた怪我に気付いてくれた事もそうだし、
私がうたた寝してしまった時は、羽織を掛けてくれたり、転けた時にも手を差し伸べてくれた。



冨岡様との記憶を思い出していたのだが、師匠の言葉に頭が考える事を止めた。






「その隊士が鬼を連れている。」





一瞬、時が止まった気さえもした。



「そして、冨岡はその隊士と鬼を胡蝶の斬撃から庇い逃した。鬼殺の妨害というのが冨岡の隊律違反。」




師匠の言葉の意味が理解出来なかった。






『お、鬼？』

「そう。鬼だ。」

『隊士は蝶屋敷で療養中なら、鬼は斬首、冨岡様と隊士は許された、と？』

「その鬼もお館様の意向で、存在を認める事が決まった。」

『おっ鬼ですよ！？人を喰らうっ！お館様とあろうお方がどうしてっ！？』

「A、落ち着くんだ。君の声で起きてきてしまうだろう？」

『す、すみません。』

次は私が諭されてしまった。



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