6-1 ページ8
.
12歳の時に、親の店で働く事になった俺はAと別れ勉強に励んだ。
専門知識も必要な商売だったし、上客様には決して失礼があってはならない。
兄様は愛想笑いや褒めるのが苦手な人で、ついに客を怒らせちまった。
だから今まで、駄菓子屋で働いていた次男の俺に白羽の矢が立ち呼び戻された。
そして、幾年が経った時俺はAに会いに向かった。
約束を果たす時が近いのだと伝えるために。
今は他の者が継いだ駄菓子屋の戸を叩いた。
「いらっしゃ…なんだ。お前かよ。どうした？」
「コラ、陣平さん。何て口の利き方して！」
戸を開けると着流しを緩く着た男と、その男をたしなめる、片腕の女が出迎えてくれた。
陣平さんとその妻である華さんだ。
華さんは、昔、幼児を体を呈して守り片腕を失ったらしい。
ぶつかったからと、幼児に武士が刀を振り上げたと言う。
斬り捨て御免。それだけ武士が偉い世の中だ。
幸い身を呈して守ったことを罪に問われ命を奪われる事はなかったが、庇った時に腕を奪われてしまった。
陣平さんとは、この街の茶屋で出会いお互いに一目惚れだったとか。
でも、片腕がない華さんは婚姻なんてと断り続けていたらしい。
迷惑と苦労しかかけないからと。
最終的に丸め込んだのは陣平さん。
本つげの櫛を贈ったのだ。
櫛を贈られちゃぁねー？？
く 苦労
し 死
婚姻生活は幸せだけじゃねぇ。
苦労も多いんだよ。んな事分かりきってることで断んな。
俺はお前の腕になる。
共に死ぬまで寄添いながら生きていこうぜ？
とか、なんとか言ったんだって！
華さんが照れながらも教えてくれた。
「爺様に聞きたいことがあって、ちょっと立ち寄ったんだけど…」
「爺さんなら、二階に居るぜ？」
「研二さん来てくれて、お爺様も喜ぶわ！」
「陣平さん、華さん、本当にありがとな！」
「は？いきなりなんだよ、気持ち悪りぃ。」
「この店継いでくれて感謝してんの！」
それと、俺を俺として見てくれてる陣平さんに。
「爺様、ちょっと邪魔するよー！」
二階の戸を叩くと爺様が出て来て、
「入れ、入れ。茶を淹れるから、ちと待っとれ。」
と、俺を部屋に通し、台所へと消えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 梅ちゃん、ミケブチコンビも大好きです(*^^*) 松田さんと萩原さんが夢主を愛でるところとかもう、ニヤニヤしながら読んでます！！ これからも応援してます！！お互いに頑張りましょうね！(*^^*) ありがとうございました！ (2019年3月22日 23時) (
レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - こっちゃむさん» こっちゃむ様の作品の感想を述べたら、まさか自分の作品の作品の感想を頂けるなんて…ありがとうございます！創作活動大変かと思いますが、無理せず自分のペースでお互いに頑張りましょう(^^) (2019年3月21日 21時) (レス) id: 6ba5bde614 (このIDを非表示/違反報告)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 雪丗様の作品の物語展開や、躍動感溢れる描写にいつも凄い！と感動しております！戦闘時の細かい描写は、目の前にその光景が広がります！雪丗様も毎日更新されていて本当に尊敬の嵐です！これからも、応援しております！！更新頑張って下さい！(*^^*) (2019年3月21日 11時) (レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 雪丗様コメントありがとうございます！雪丗様にそのようなお褒めの言葉を頂けるなんてっ！！もう、言葉になりません！(ToT) 語彙力！ 犯人のことまで詳しく書きませんでしたが、そこも読み取って頂き嬉しく思います！続編は、いつになることか…笑頑張ります！ (2019年3月21日 10時) (レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - これからも頑張ってください。応援しております。 (2019年3月20日 20時) (レス) id: 6ba5bde614 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こっちゃむ | 作成日時：2019年1月23日 23時
