5 ページ6
.
「流石ですねー！お目が高い！これ仕入れたばかりの新物ですよー。それにお姉様には、この色が良くお似合いだ！」
「うふふ。なら、これで1着仕立てておくんなんし。」
「ありがとう御座います！」
「おがみいす。楽しみに待っていんすにえ。」
「お任せ下さい！素晴らしい物に仕立て上げますから。」
萩越の主人が来ているはずなのだが、私が知っている主人の声より幾分若く聞こえる。
その場を覗き見ると、黒髪の長髪の男の姿が見えた。
他の遊女と一緒に反物を選んで下を向いているので、顔ははっきりと見えなかったが…
萩越の主人は短髪だったし
あの男は主人よりだいぶ若い。
そんな時に1人出てきたので尋ねてみる事にした。
『待ちんなんし。』
「どうなんした？」
『あの人さんは？』
「萩越屋の若旦那だんす。」
『ほんに？旦那さんは？』
「若旦那が継ぎささんしたとか。詳しいことは
それもそうかと思い、礼を言って部屋へと足を踏み入れた。
『失礼しんす。』
一言声をかけると、新造の子が近寄ってきた。
「姐さん！」
『気に召す物はありんした？』
「どれも素敵で迷うござんす」
『若旦那さんに、選んでもらいなんす。この子に見合う物を選んで…』
くんなんし。と続けるつもりだったのだが、
驚きのあまりに言葉が続かなかった。
若旦那の顔をしっかりと認識してしまったからだ。
その若旦那は、私の記憶より成長してはいるが
夢にまで見た想い人
けんじくんだったから。
『…っ。』
それは、けんじくんも同じだったみたいで、
「A…？」
もう呼ばれなくなった私の名を呼んだ。
『人違いじゃあ、おっせんか？わっちの名は、
私はもうAではない。
ここの花魁。朝葵なのだ。
『この反物で1着仕立ててくんなんし。あとは、新造と禿の子達のもおがみいす。』
「姐さん、もう行きなんすか？」
『わっちは、先に行きなんす。お前達は、もちっといなんし。』
「あい。」
私は早々に部屋を後にする。
「若旦那さん？どうなんした？」
「えっ？」
「だまっておいでなんすから。」
「すみません。少し考えごとをしてました。」
そんな会話を聞きながら。
『ぞっとしんす』
私のそんな一言は、誰の耳に届くこともなく空気の中に溶けていった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 梅ちゃん、ミケブチコンビも大好きです(*^^*) 松田さんと萩原さんが夢主を愛でるところとかもう、ニヤニヤしながら読んでます！！ これからも応援してます！！お互いに頑張りましょうね！(*^^*) ありがとうございました！ (2019年3月22日 23時) (
レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - こっちゃむさん» こっちゃむ様の作品の感想を述べたら、まさか自分の作品の作品の感想を頂けるなんて…ありがとうございます！創作活動大変かと思いますが、無理せず自分のペースでお互いに頑張りましょう(^^) (2019年3月21日 21時) (レス) id: 6ba5bde614 (このIDを非表示/違反報告)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 雪丗様の作品の物語展開や、躍動感溢れる描写にいつも凄い！と感動しております！戦闘時の細かい描写は、目の前にその光景が広がります！雪丗様も毎日更新されていて本当に尊敬の嵐です！これからも、応援しております！！更新頑張って下さい！(*^^*) (2019年3月21日 11時) (レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
こっちゃむ(プロフ) - 雪丗さん» 雪丗様コメントありがとうございます！雪丗様にそのようなお褒めの言葉を頂けるなんてっ！！もう、言葉になりません！(ToT) 語彙力！ 犯人のことまで詳しく書きませんでしたが、そこも読み取って頂き嬉しく思います！続編は、いつになることか…笑頑張ります！ (2019年3月21日 10時) (レス) id: d587bb3c17 (このIDを非表示/違反報告)
雪丗(プロフ) - これからも頑張ってください。応援しております。 (2019年3月20日 20時) (レス) id: 6ba5bde614 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こっちゃむ | 作成日時：2019年1月23日 23時
