藍沢先生…！！6

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白石side





…………藍沢先生の様子がおかしいと感じたのは、
殆ど勘だった。




どこか顔色が悪く、いつもこの季節は着ないような長袖を着ていて、作業の途中に腕を押さえ、
作業はあまり進んでいない。



何かあったか問うも、流されてしまった。




＿＿＿＿＿＿＿何か、隠してる……。




そう思ったのは、10年来の付き合いだからだろうか。



彼が返答までに間を開ける時は大抵図星の時。



彼の指の癖が出る時は、何か思い悩んでいる時か、
何か考えている時。




彼は表情の変化が少なく、感情がわかりにくいけれど、この10年でまだ感情を表に出すようになった方だ。




＿＿＿＿＿何年経っても、何もかも一人で溜め込むところは変わっていない。



他人に相談することが、他人に頼ることが、
『迷惑』だと捉えているから。





…………緋山先生と冴島さんも連れて、無理矢理にでも事情を聞こうかと考える。




そうでもしなければ、彼は口外しないだろう。




………………それまでに言ってくれたらいいのだけれど。







✲✲✲



そんな風に軽く考えていた私は、事態がそんなに
大きいことはもちろん知らず。





＿＿＿＿＿あの時、引き止めてでも直ぐに聞いていたら、事態は大きくならなかっただろうか。



彼の異変に、気付いていたのに…、何もしなかったのがいけなかったのだろうか。






どちらにせよ、『後悔』する頃には、
もう手遅れであることは分かっていたのに。






神様は…、運命は残酷だと改めて思い知らされた。






大切なパズルのピースが失われたかのように、
ポッカリと空いてしまった穴を塞ぐものは
何も無かった。

✲✲✲


＊＊＊＊


藍沢side



脳外の医局に入ると、コーヒーを啜りながらパソコンに向かう新海の姿があった。


新海「……よう、藍沢。……あれ、お前長袖着始めたのか」


「…………あぁ、」

何度目かの質問に、いつもの顔で淡々と返す。


新海「……今日は救命の勤務日だろ。…落ち着いてるのか？」

「…………まぁな。…少しやりたいことがあったから寄っただけだ」

新海「……へぇ、、。……まぁ、こっちも落ち着いてるし、構わないんだけどな」


いつものように笑顔を取り巻きながらそう話す新海。



新海「……なんか雲行き怪しいな…。夜には雨降りそうだ。」


コーヒーのカップ片手に、窓から空を見つつそういう新海。








新海の言うように、空模様は今朝とは違ってどんよりと薄暗くなっていた。

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