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スタッフステーションを出て、更衣室へと向かった。
カタンッ、といつもの音を立てて開けたロッカーの中には、上の棚に閉まってあった、婆ちゃんとの写真が入った写真立てが割れていて……
写真も破れていた。
………またか。
どうせ、あいつらの仕業だろう。
スクラブがハサミで切られてたこともあれば、
物が破損してたり。
最初は……子供じみた、馬鹿げたいたずらだと思っていた。
でもそれは、次第にヒートアップしていって。
「お前のせいで、全てが狂った」と、
そう言われた時、ズキリと胸が痛む気がした。
………やはり、自分は人の人生を狂わせる存在なのだと、そう思った。
はあっ、とため息をつくと共に、今までの記憶が蘇る。
****
親をなくしてから、『どうしてお母さんがいないのか』と問われるようになって。
その度に、"分からない"と応えて。
次第に、『お前が悪い子だったから、お前のお母さんはお母さんを辞めたのだ』
と言う奴も出てきて。
授業参観や運動会にばあちゃんが来る度にそう言われた。
二人三脚で、先生と走った時、
周りの生徒だけじゃなくて、ほかの親達もが
憐れむような……、そんな目で見てくる。
………それが、俺には苦痛だった。
………母さんが、病気で亡くなって、
それから父さんも家を出ていったことを聞いて…
"自分が悪い子だったから、捨てられた" ……と、そう思い始めた。
自分が生まれて来なければ、母さんは生きてたかもしれない。
父さんの人生も、狂わせずに済んだんだ。
ばあちゃんに、こんな迷惑かけずに済んだ。
……俺がいなければ、黒田先生と、天野奏の、命よりも、大切なものを、奪わずに済んだかもしれない。
………俺が全てを、狂わせた………
そう思えば、俺は、"人から必要とされている"のか、分からなくなってしまった。
………俺さえいなければ、母さんが屋上から飛び降りることも、
ばあちゃんが貧乏ながら俺の世話をすることも、
………すべて、起こらなかったのに。
****
人は……
人から必要とされない限り、生きていけない。
………俺は今、必要とされているのだろうか。
…全てを狂わせるこの俺を、必要としてくれる人間が居るのだろうか。
****
適当に手ぐしで髪型を整え、スタッフステーションに戻り、白石に帰宅することを伝えた。
白石「…ゆっくり休んでね。」
スタッフステーションを出かけた俺に、当直の白石がそう言う。
「………………ああ」
俺はそれだけ応えて、家へと向かった。
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yuuftykk(プロフ) - さくらもちぱんさん» ありがとうごさいます!!楽しみにしてくれているなんて、とても嬉しいです!!頑張ります!! (2019年4月4日 14時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
さくらもちぱん - 藍沢先生がかいた手紙とかほんとうに感動しました!毎回楽しみにしています。これからもがんばってください! (2019年4月4日 14時) (レス) id: cdc2a4987c (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 愛子さん» ありがとうございます!!リクエストにお答え出来ていて良かったです!こんな作者ですが、これからもよろしくお願い致します! (2019年4月4日 9時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
愛子(プロフ) - リクエストした話読みました。個人的には、これまでの話の中で一番です。これからもリクエストさせていただきます。 (2019年4月4日 2時) (レス) id: 0fe946f898 (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 実桃さん» そんなことを言って頂けて、とても嬉しいです!!毎回読んでくださってありがとうごさいます!頑張ります、!! (2019年4月4日 0時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:自鳴琴 | 作成日時:2019年2月18日 21時