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橘side
コンコンッ…といつも来る奴らとは違う、控えめなノック。
「どうぞ、」
そう声をかけて入ってきたのは、藍沢だった。
藍沢「……失礼します」
「藍沢か、どうした。お前が来るなんて珍しい」
少し笑顔で言えば、いつも通りの無表情で。
……でも少しだけ、顔が強ばっているようにも見えた。
藍沢とは途中、学科が別れたものの、付き合いは長いため、ほんの少しの変化も分かるようになった。
「……どうした、?」
なかなか口を割らない藍沢に、もう一度声をかける。
藍沢「……橘先生。俺、……白血病が見つかりました。」
最初は、嘘だろうとでも思った。
藍沢のくせに、中々の冗談を言うではないか、だなんて思った。
……それでも、藍沢の表情が、"事実"なのだと、
嫌でも知らせる。
「……本当、なのか……?」
そう問えば、藍沢は手に持っていた封筒を差し出してきた。
藍沢「……検査結果です。他の病院で検査してもらいました。……念の為、今週末から休職するつもりです」
「……そう、か……。西条先生には、伝えたのか?」
藍沢「……いえ…。この後報告に。」
「……白石達には、…?伝えるのか?」
そう問うと、藍沢の顔がより強ばる。
藍沢「……言わないつもりです。…余計な心配かけたくないので。……橘先生も、あいつらには言わないでください。………お願いします」
……やはり、そう言うか。
藍沢は、冷たくて無表情のくせに、本当は誰よりも優しい、暖かい心の持ち主だ。
……周りをよく見て、俊敏に、冷静に、正確に動ける。
そして、誰よりも、人との関係が崩れることを恐れている。
……人に迷惑をかけることを恐れている。
それが例え、"心配"だとしても。
……藍沢が、望むならば…と、俺はそれを了承した。
藍沢「……失礼します」
カチャン…と音を立てて閉まったドア。
……医者なのに、どうしてあいつなのだろうか、と
そう思った。
***
西条side
藍沢から"白血病"である事を聞かされて、夢なのだろうかと疑った。
……それでも、目の前の診断結果と、藍沢の真剣な表情が"それは現実なのだ"と物語っている。
「……今すぐ治療した方がいいんじゃないのか、」
そう言えば、いつもより暗い顔で口を開く。
藍沢「……それは、分かっています。…今週末で休職するつもりです。……忙しい時に、すみません」
「…いや……。構わない。……絶対に、戻して帰ってこなきゃ許さんからな。」
そう言うと、"分かりました"そう言って、出て行った。
……人生とは、残酷だと、この時改めて思った。
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yuuftykk(プロフ) - さくらもちぱんさん» ありがとうごさいます!!楽しみにしてくれているなんて、とても嬉しいです!!頑張ります!! (2019年4月4日 14時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
さくらもちぱん - 藍沢先生がかいた手紙とかほんとうに感動しました!毎回楽しみにしています。これからもがんばってください! (2019年4月4日 14時) (レス) id: cdc2a4987c (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 愛子さん» ありがとうございます!!リクエストにお答え出来ていて良かったです!こんな作者ですが、これからもよろしくお願い致します! (2019年4月4日 9時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
愛子(プロフ) - リクエストした話読みました。個人的には、これまでの話の中で一番です。これからもリクエストさせていただきます。 (2019年4月4日 2時) (レス) id: 0fe946f898 (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 実桃さん» そんなことを言って頂けて、とても嬉しいです!!毎回読んでくださってありがとうごさいます!頑張ります、!! (2019年4月4日 0時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:自鳴琴 | 作成日時:2019年2月18日 21時