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器の3分の1が減った頃、少しずつ感じ始めた満腹感。
ちょっと気持ち悪くなり始めたのを海人に悟られないように平成を装って、またスープを流し込んだ。
途端、ぐら、と視界が歪んで。
相変わらず気持ち悪すぎる目眩に、思わず目をぎゅっと閉じた。
「海斗?ぐらぐらする?」
「ん、っ」
「息だけ頑張ろうね、ゆーっくり深呼吸しよ」
迷わず俺を引き寄せて背中をさするその手に甘えたくなるのは、毎回毎回懲りずに俺の手を取ってくれるこいつのせいだ。
見かけによらず逞しい肩に頭を預けて、落ち着いた心臓の音に合わせて息を吐いた。
と同時に感じる、強い吐き気。
今食べたものがせり上がってくる感覚がして、反射的に口元に手を当てた。
「気持ち悪い?吐いちゃおっか、ゴミ箱…」
「っや、」
ゴミ箱を床から引き上げようとする海人の手を、ぎゅっと掴む。
やだ。吐きたくない。
海人がつくってくれたの、まだ食べれる、おれ。
「…かーいと。いいから、別に何回でも作るから。ほら吐きな、楽んなるよ。」
「やだっ、ゃ、…ぉえ…っ!」
結局、力の入らない体じゃ抵抗も意味がなくて。
強めに背中を摩られて、そのまま戻してしまった。
「っ、ごめ、なさ…!ごめ、っん、きら、ぃ、なんないで…っ、……げほ、っ、ぅ、え、!」
「わーかったって、大丈夫だよ。嫌いになるわけないじゃん。…まだ気持ち悪いでしょ?いいよ、ほら」
ただただ海人に申し訳なくて、でもまだ気持ち悪くて仕方ない。ぼろぼろと止まらない涙が、海人に背中を叩かれたことによって戻した吐瀉物と一緒にゴミ箱に吸い込まれていった。
「っは、…はぁっ、ん、、は、」
「…ちょっと落ち着いた?頑張ったね」
ベッドサイドに置かれたタオルで口元を拭って、それから俺の頭を緩く撫でる。口ゆすごっかぁ、なんて呟いた海人は、そっと俺を抱き上げた。
様子を伺うように海人を見上げれば、ふわ、と柔らかく笑って、いまだに流れ落ちる俺の涙を拭うように頬にくちびるを落とす。
「俺はね、海斗が笑ってたらなんだっていいの。」
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yukarin - 翡翠様、承認いただきありがとうございます。これからよろしくお願いいたします。 (4月6日 12時) (レス) id: 4330d63972 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - yukarinさん» メッセージありがとうございます!Xのフォロリク承認させていただきましたのでご確認ください🙇♂️ (4月6日 11時) (レス) id: a2463a8237 (このIDを非表示/違反報告)
yukarin - 翡翠様、初めまして。リアルでは如恵留さん推しのyukarinと申します。お話のカップリングはうみげん一択でしたが、翡翠様のお話を拝読し、うみちゃかの良さを噛み締めております。Xに投稿されたお話も拝読させていただければ光栄です。よろしくお願いいたします。 (4月5日 17時) (レス) id: 4330d63972 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます。いただいたリクエストは順番に書いておりますので、しばらくお待ちください🙇♂️ (3月30日 16時) (レス) id: a2463a8237 (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - はい大丈夫です。 (3月30日 16時) (レス) id: 6da2fe3136 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年11月19日 20時