また、春が来る 緑×青 ページ20
「春、桜舞う」「梅雨、ひとつ傘の下」「夏、奇跡は暑き夜に」「秋、橙の世界で君を知る」「冬、白く染まる街で」のふたり。
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side.Matsuda
「卒業生が退場します。大きな拍手でお送りください。」
体育館から聞こえる、放送の声。
あぁ、もうちょっとだなぁ、って。
いくつもいくつも泣いてる声がして、3年生の先輩たちはそれぞれの教室に戻っていく。
少しすれば、各クラスが解散したのか校舎がひどく賑やかになった。部活にも入ってなくて、海斗とうみ先輩以外との関わりがほとんど無かった俺は、先輩のとこに突っ込んでいく同級生たちを校舎の影から見ていた。
…さみしい。
仲のいい子がいないわけじゃない。むしろ多いほうだと思う。バカやれる友達だって、たくさんできた。
それでも、俺の高校生活の1年目を彩ったのは、うみ先輩ひとりだった。
がさ、と音が鳴る。
落ち葉を踏みつけたうみ先輩が、呆れたように笑っていた。
「なんでおまえがそんなセンチメンタルなの?」
「…だってさ」
「なぁによ」
「……会える時間、減っちゃうんだろうし。うみ先輩、大学行ってもモテるだろうし。なんか…俺、まだうみ先輩の恋人だって自信、持てないから、、俺の知らない世界に、うみ先輩が行くのがめっちゃ怖い。」
「…おぉ、」
「言わせといてそれは失礼ですよ」
「いや、ははっ。思ったより素直に教えてくれたなぁと思って。別になんでもないですって言われるかと思ってた。」
「……素直になれば、うみ先輩のことちょっとでも長く引き止められる?」
「おまえさぁ、なんでそんな自分のこと下に見てるわけ?」
するり、その長い指が、俺の顎を掬う。
そっとくちびるにキスが落ちて、思わず周りを見渡した。
「おまえも失礼だよ、恋人とのキスの直後に周り気にしないでくんない?いい雰囲気だったじゃんよ。」
「…やだもん、最後にうみ先輩に変な噂立つの」
「学校にいにくくなるのはおまえだけどね」
「まぁね」
「…俺はいいよ、なんでも。おまえがいればそれで。」
「……口うまいって言われません?」
「言われたことねぇ、思ったこと言ってるだけだよ。」
「……」
「ふふ、顔真っ赤」
「も、ほんとやめて…」
俺の髪を梳いていた手に、頬を包まれる。
もう1度くちびるが重なったかと思えば、正面からぎゅうっと抱きしめられた。
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yukarin - 翡翠様、承認いただきありがとうございます。これからよろしくお願いいたします。 (4月6日 12時) (レス) id: 4330d63972 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - yukarinさん» メッセージありがとうございます!Xのフォロリク承認させていただきましたのでご確認ください🙇♂️ (4月6日 11時) (レス) id: a2463a8237 (このIDを非表示/違反報告)
yukarin - 翡翠様、初めまして。リアルでは如恵留さん推しのyukarinと申します。お話のカップリングはうみげん一択でしたが、翡翠様のお話を拝読し、うみちゃかの良さを噛み締めております。Xに投稿されたお話も拝読させていただければ光栄です。よろしくお願いいたします。 (4月5日 17時) (レス) id: 4330d63972 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます。いただいたリクエストは順番に書いておりますので、しばらくお待ちください🙇♂️ (3月30日 16時) (レス) id: a2463a8237 (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - はい大丈夫です。 (3月30日 16時) (レス) id: 6da2fe3136 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年11月19日 20時