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「…いと、、海斗!!」
名前を呼ばれて、目を開く。
うっすらぼやけた視界の中で、安心したような、柔らかい顔が見えた。
「海斗…っ、よかった、!」
瞬間、さっき起きたことが、濁流のように頭に流れ込んできた。
…呼吸は、どうやってするの、
「は、…っひゅ、」
わけがわからない、こわくて、くるしくて、
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「海斗」
雑音だらけの俺の聴覚に、それは驚くほどクリアに響いた。
気づけば俺は、優しいぬくもりの中にいて。
「大丈夫だからね、…俺ここにいるから」
どく、どく、耳元で聞こえる落ち着いた心音に合わせて、ゆっくりと息を吐いた。
徐々に意識がはっきりしてくる。
「…海人、」
「うん。おかえり海斗。」
「おれ、の、へや?」
「そうだよ」
「ど、して…、」
「…海斗、帰ってこないから。連絡もつかないし、…今日おばさんの命日だし。なんかあったかなって実家まで行ってみたの。…流石に焦った、心臓止まるかと思った」
言いながら、俺のまぶたにキスを落として。
「怖かっただろ、…よく頑張ったね」
なんて笑った。
…俺、こいつ以外に抱かれたんだ、
再認識した途端、罪悪感と気持ち悪さに、思わず目の前の体を強く抱きしめた。
「お、?どした、」
「かいと、」
「うん?」
「っおれ、…海人以外の人に、」
「…うん」
あれ、…あんま気にしてないのかな、、そもそもはじめてもあいつだったし、海人の中ではそんなに大きな問題じゃないの?
…幻滅、したかな、
「や、じゃない、?」
「…嫌だよ、死ぬほど。大好きな人が自分以外に抱かれたって考えるだけで、めっちゃ苦しい」
「っ、」
「でもそれは海斗のせいじゃないし、海斗に言ったところで防げるわけじゃない。海斗は被害者でしょ」
「…ん、」
「そんなこと考えなくていいよ、俺海斗のことどうでもいいとか幻滅したとか絶対思わないから」
お見通し、だった。
相変わらずこいつは、俺の不安を全部見透かしてしまうんだ。
「海斗がゆーっくり休んで、で体調戻ったら、どろっどろに優しく抱いてあげる」
「…ふふ、うん、」
「知ってる?おまえ熱あるんだよ」
「へ、」
「気づいてなかった?…じゃあほら早く寝るよ」
「海人、」
「ん?俺も今日はここに泊まるよ」
「ん、…俺が起きるまでいてね」
「はぁい」
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ページを、めくる。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年5月16日 18時