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昼休み、海人とは別の、小学校から仲のいい友人に声をかけられてほんの少し顔を上げる。
「ちゃか、顔色やばいよ。保健室行こ」
明言したことはないけれど、こいつもずっと、体の弱い俺を気にしてくれていた。
「…行く、」
「素直じゃん、がちやばめ?」
「んー…」
ただ、がっつりと体にふれられるのはつらくて。
だから、自分は壁を伝って、彼は壁の反対側で、人通りの多い昼休みの廊下から俺を隠してくれていた。
保健室に入って、ぐわんと揺れる体をベッドに預ける。
すっかり馴染みになった養護教諭の先生が、慣れたように体温計を差し出した。
「…やば、」
思っていたよりも上がった体温を見なかったことにして、スイッチを切る。
「こっちとしては帰ってほしいんだけど…」
困ったような声に、働かない頭をフル回転させる。
体が弱いことは知られているけど、家庭内の話はしていないから…俺が判斷するしかない。
…今日何曜日だ、父さん何時に帰ってくるっけ、
「かえり、ます」
「親御さんはお迎え難しいかな?」
「ちょっと…いそがし、そう、なので」
「そう…?ならちょっとここで休んで、良くなったら帰ったら、」
「や、たぶん…悪化するだけ、なので」
納得していなそうな先生を押し切って、連れてきてくれた友人に荷物を頼む。
「ほい。ちゃんと休めよ」
「ありがと、」
「てか早くうみんちゅと仲直りしろよ笑」
「がんばる…」
朝と同じように、体を必死に動かす。
電車の揺れが気持ち悪くて、家にたどり着いた瞬間トイレに駆け込んだ。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年5月16日 18時