漆拾話 Q ページ36
_____事務員二人が避難したと云う事で、俺達はとある駅に来ていた。
「＿…こんな僻地で再び君と
太宰が、謎の雰囲気を醸し出しながらそう云っている。
「ワンワン！」
「おっと！威勢がいいね、だが無駄だよ。此方には切り札がある。見給え」
太宰は胸懐からドックフードを取り出した。
犬は嬉しそうに目を輝かしている。
「欲しいかい？欲しいよねぇ」
袋からひと粒ドックフードを出して、太宰は握る。
ぱっ、と手を開けた時にはなくなっていた。
「此れが格の違いだよ。私の勝ちだ」
……………そんな太宰と犬のやり取りを、俺と敦はベンチに座って見ていた。
『…なぁ、彼奴何してンの』
「さぁ…」
出していた携帯を仕舞いながら、敦に聞くが首を振られる。
太宰がもう一度手を握ると、ドックフードが出て来た。
「此れに懲りたら、街中で私に吠えるのは慎む事だ」
出したドックフードを食べて、太宰は俺達の元へ来た。
「犬……苦手なんですか？」
「人間より余程難敵だよ」
『人間は敵じゃないのな…』
「うふふ。…其れで、事務員さん達の避難は？」
太宰に聞かれ敦は携帯を開く。
「国木田さんからの連絡で予定通り次の列車だそうです」
『事務員が狙われるなんて……此の三社戦争、探偵社は大丈夫なのか？』
大方、探偵社は劣勢で最優勢がマフィアだろうけどな。
「そうだねぇ。私の見立てでは探偵社が最も劣勢、最優勢はマフィアかな」
うわ、中ったよ。
「そんな……太宰さん！何か逆転の計略は無いのですか？」
「あるよ、こんくらい」
ドックフードを食べながら太宰は指を3本立てる。
「三つも？」
「いや、三百だけど」
「三百！？」
『えげつねー…』
「けどね、敦君、A君。戦況は生き物だ。必勝の秘策が僅かな状況変化ひとつで愚策に豹変する。だから情報が大事なのだよ」
確かに太宰の云う通りだ。
「特に今回は相手が相手だ。…森さんは合理性の権化でね。数式の如き冷徹で戦況を支配する」
くしゃ、と持っていたドックフードを潰す太宰。
「刺客から逃れて気が緩む今を狙って必ず何かを仕掛けてくるよ」
……まるで、列車内で何が起こるのか判っているみたいだな。
「…………む」
『？』
何かの気配がしたと同時に、太宰が立ち上がった。
「どうしました？太宰さん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます！ (2018年5月24日 21時) (
レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか？() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し！！更新待ってます！ (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います！ (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：曉 | 作成日時：2017年10月15日 22時
