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伍拾壱話 ページ4

彼女は恐怖に怯えた顔でそちらを見た。


ゆらゆら、陽炎の様に揺らめいたかと思うと敦が姿を現す。


「どうして_____扉は確かに閉まった筈なのに!」


「君の見落は一つ。此の闘いは最初から二対一だ。ドアが開いた瞬間に、谷崎さんの『細雪』で扉の映像を偽装した」


「そんな……。其の上、部屋へと吸い込む力に、腕力だけで抵抗したの?そんな事、出来る訳が」


ルーシーが焦り出すのが判った。


「君は……思い違いをしてる。僕は強くも人気者でもない。寧ろ生きる事はずっと呪いだった。だから、他人を妬み怨む。君の情動(きもち)はよく判る。本当は君に、此の作戦を失敗して欲しくない……居場所を失って欲しくない!でも_____僕は弱くて未熟だから、他に方法が思い付かない」


「!?」


彼女が何かに引っ張られる。


「此れは……!」


敦が持っていた飾帯がルーシーに巻き付いていた。


「飾帯を君に結んでおいた。引き込まれる直前に」


『へぇ、頭いい』


敦が飾帯を引っ張るとルーシーは少しずつ扉へと近付いて行く。


完全に扉に近付くと、左手で彼女を捕まえた。


「はっ、放しなさい!」


ルーシーは抵抗するが、其の手は放されない。


「異能を解除して、皆を解放しろ。でないと、君を奥の(へや)に引き摺り込む」


「そんなっ……!」


「鍵がなければ扉は開かない。なら、君が室に幽閉されれば、扉を開けられる人間は誰も居なくなる。そうなってから、能力を解除しても君は元の世界へ戻れない。違うか?」


「其れは……」


抵抗していた彼女が大人しくなっていく。


図星なんだな。


「異能は便利な支配道具じゃない。其れは僕が善く判ってる。自分の創った空間で死,ぬまで_____否、死,んだ後も囚われ続けたいか?」


「あたしは……失敗するわけには」


ルーシーが涙を流し始めるが、敦の脅しは止まらない。


「今から手を離す。決断の時間は、扉が閉まる一瞬しかないよ」


「だめ、待っ」


敦は悲しそうな顔で扉から手を離した。


無数の手が、二人を引き摺り込んでいく。


__________扉が閉まる音が聞こえてくると思ったがそんな音はしない。


『戻って来たか』


小さく溜息をつくと、敦が震えているルーシーに近寄った。


「………御免。若し………何か僕に、」


彼女は敦を睨みつけると、人混みの中へと消えて行った。


「あああっ、エリスちゃん!」


そんな声が聞こえて、俺達は転びかける。


……ま、一段落かな。

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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月15日 22時

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