全テノ始マリノ話、肆 ページ18
『ハギワラって……異能力者なのに皆に嫌われてねぇの?』
あの後、フェーヂャと別れた俺はハギワラと一緒に廊下を歩いていた。
「んー?だって私、云ってないから」
『はぁ?』
「"私は異能力者です"って云うと思う?ドストエフスキーみたいに暴走してしまったのなら仕方ないけど」
『え、フェーヂャの"あれ"って暴走なのか?』
驚いて目を見開くと、ハギワラはくすり笑う。
「そうではないけど…暴走と云うより、"無意識"に近いかな」
『無意識…』
「"傷付けられたから反射的に傷付けた"みたいな感じ。判る?」
『なるほど』
猫に傷付けられた様な怪我は見つからなかったけどな。
『ハギワラは暴走とかするのか?』
「私はもう
『ふぅん』
話している内に、自分の部屋の前に着いた。
「着いちゃったね。お休み、イシュリー」
『あぁ。お休み、ハギワラ』
ハギワラに小さく手を振ってから自分の部屋に入る。
『ふわ…』
小さく欠伸をしながら、寝台に向かった。
『よく動いたからな…。さっさと寝るか』
上着を脱いで其の辺に投げ、寝台に飛び込む。
『お休み、フェーヂャ』
小さく呟いて襲ってくる睡魔に身を任せた。
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「_____そろそろ、飽きたなぁ」
窓から見える月を眺めながらぽつりと呟いた。
「新人君にもバレちゃったし…どうしよっか、シマ」
シマ、と呼ばれた蝶は彼女の周りをくるりと回る。
「聞かないでもいいって?ふふ、そうね」
彼女はくすくす笑いながら月から蝶へと視線を移した。
「ま、手違いで消しちゃっても問題ないよね?」
蝶は何も答えない。
「…"新しい座敷の中で、蝶が翼を広げている"」
彼女の周りに文字列が浮かび上がった。
「"白い、厚ぼったい紙のやうな翼を震わしている"」
文字列は蝶へと成り、彼女の部屋を舞う。
「さぁ、始めましょうか。異能力_____『蝶を夢む』」
蝶は部屋から消えてしまった。
「………私ね、気になる事があるの」
誰もいないのに喋り続ける女性。
「イシュリーはドストエフスキーに初めて会った時、死,んだ子鳥を見て何も思わなかったのかしら」
普通、人は悲しいとか可哀想だとか思うはずだ。
「彼は其の感情を見せなかった」
女性は目を伏せる。
「不思議ね。まるで、昔から人を殺,してきたみたい」
小さく溜息をついた彼女は、ゆっくりと部屋を出た。
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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:曉 | 作成日時:2017年10月15日 22時