検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:115,797 hit

全テノ始マリノ話、肆 ページ18

『ハギワラって……異能力者なのに皆に嫌われてねぇの?』


あの後、フェーヂャと別れた俺はハギワラと一緒に廊下を歩いていた。


「んー?だって私、云ってないから」


『はぁ?』


「"私は異能力者です"って云うと思う?ドストエフスキーみたいに暴走してしまったのなら仕方ないけど」


『え、フェーヂャの"あれ"って暴走なのか?』


驚いて目を見開くと、ハギワラはくすり笑う。


「そうではないけど…暴走と云うより、"無意識"に近いかな」


『無意識…』


「"傷付けられたから反射的に傷付けた"みたいな感じ。判る?」


『なるほど』


猫に傷付けられた様な怪我は見つからなかったけどな。


『ハギワラは暴走とかするのか?』


「私はもう制御(コントロール)出来るから…。あんまりないかな」


『ふぅん』


話している内に、自分の部屋の前に着いた。


「着いちゃったね。お休み、イシュリー」


『あぁ。お休み、ハギワラ』


ハギワラに小さく手を振ってから自分の部屋に入る。


『ふわ…』


小さく欠伸をしながら、寝台に向かった。


『よく動いたからな…。さっさと寝るか』


上着を脱いで其の辺に投げ、寝台に飛び込む。


『お休み、フェーヂャ』


小さく呟いて襲ってくる睡魔に身を任せた。


.


.


.


.


「_____そろそろ、飽きたなぁ」


窓から見える月を眺めながらぽつりと呟いた。


「新人君にもバレちゃったし…どうしよっか、シマ」


シマ、と呼ばれた蝶は彼女の周りをくるりと回る。


「聞かないでもいいって?ふふ、そうね」


彼女はくすくす笑いながら月から蝶へと視線を移した。


「ま、手違いで消しちゃっても問題ないよね?」


蝶は何も答えない。


「…"新しい座敷の中で、蝶が翼を広げている"」


彼女の周りに文字列が浮かび上がった。


「"白い、厚ぼったい紙のやうな翼を震わしている"」


文字列は蝶へと成り、彼女の部屋を舞う。


「さぁ、始めましょうか。異能力_____『蝶を夢む』」


蝶は部屋から消えてしまった。


「………私ね、気になる事があるの」


誰もいないのに喋り続ける女性。


「イシュリーはドストエフスキーに初めて会った時、死,んだ子鳥を見て何も思わなかったのかしら」


普通、人は悲しいとか可哀想だとか思うはずだ。


「彼は其の感情を見せなかった」


女性は目を伏せる。


「不思議ね。まるで、昔から人を殺,してきたみたい」


小さく溜息をついた彼女は、ゆっくりと部屋を出た。

全テノ始マリノ話、伍→←全テノ始マリノ話、参



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (142 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
210人がお気に入り
設定タグ:文スト , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年10月15日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。