File212 ページ46
.
「元気そうだな」
「！」
目覚めてから数日後の昼。
病室の入り口に立つ諸伏と降谷にAは驚く。
わざわざ会いにきてくれたのか。
2年間の空白があるとは言え、公安の忙しさを知らないわけではない。
ベッドのそばにきた諸伏と目が合うなり、Aは眉を下げた。
「…景、あの時はごめん」
「A…いいんだ」
あの夜の出来事。
切羽詰まって大した言葉も交わせず、会えた喜びは少しだけ。
頭を少し下げるAに諸伏は優しく首を横に振る。
誰にも迷惑をかけたくない。
自分の問題は自分で決着を。
それは諸伏自身が、警察学校時代にずっと抱えていたものに似ていた。
「Aの気持ち、ちゃんとわかってるから」
けれど結局、諸伏もAも、"仲間"に救われた。
憂いも恐怖も何もかもを飲み込んでくれる存在がそばにいて、大きな壁を乗り越えた。
同じ思いをしたもの同士、照れ臭そうに笑う。
凍ったものが解けていくように胸の内がじわじわと温かくなる中、Aは諸伏の後ろに立つ降谷に視線を移した。
「零も、ありがとう」
「こちらこそ。おかげで氷室雄人を確保できた」
「零がいなかったら…無理だったよ」
目的達成の言葉からとは、いかにも公安らしい。
ここまでの動きをしてくれるとは思わなかったが、そう言ってくれるということは、あの暗号の宛先は間違いではなかったのだろう。
彼ならば、という絶対的な信頼は、昔も今も揺るがない。
「氷室雄人の件は公安が処理することになっている。
悪いが回復次第、色々聞かせてもらうぞ」
「わかった」
彼は間違いなく今回1番の功労者だ。
しばらくは無茶振りが続きそうだが、それくらいの借りがある。
違法作業でも責任を負うこと以外はなんでもしよう。
素直に頷きを返せば、降谷はゆっくりと眉を動かし、同期にしか見せない柔らかい表情を浮かべた。
「…無事で、良かったよ」
「……おかげさまで」
爆弾は止まり、外され、爆弾犯と氷室雄人は確保。
死者は出さなかった。
"全てがうまくいく"なんて信じたことはなかったが、目の前に立つ2人の微笑みを見て、"全てがうまくいった"のだと実感する。
他でもない、彼らのおかげで。
誇らしい同期に、胸が熱くなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 492人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七草(プロフ) - ふゆりぬさん» ふゆりぬ様はじめまして〜！当作品をご覧いただきありがとうございました…！楽しんでいただけましたら嬉しいです！お言葉に甘えて来年もやらかさせて(?)いただきます…！ (2022年12月27日 20時) (
レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 早桃さん» 早桃様！この度をお付き合いくださり、また数々のコメント本当に嬉しかったです！ありがとうございました！ (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆりぬ - 鈍色編完結おめでとうございます！！松田くん推しなのでほんとにキュンキュンしながらとっても幸せな時間を過ごさせてもらいました。これで終わらなくてよかった、、じゃんじゃんやらかして下さい！笑これからも応援しています✨ (2022年12月26日 21時) (レス) @page50 id: b50b7f8ace (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 鈍色編完結おめでとうございます！！思いを伝えられてよかった…😭何回もごめんなさい！ (2022年12月26日 12時) (レス) @page49 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - マシュマロ。さん» コメントありがとうございます！色々回収しました！(語彙力皆無) (2022年12月22日 22時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七草 | 作成日時：2022年12月4日 0時
