File191 ページ24
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午前11:47。
「……わ、たる…」
2年ぶりの声。
疲れ切った顔とボロボロの格好は、長い間、彼女がどのように生きてきたのかを物語っていた。
信じられないようなものを見るようなAの瞳は大きく伊達を映している。
「なんで、ここに……」
「真江の仇がいるってのに、俺が来ねぇわけないだろ」
「!?なんで知って…っ」
「止めにきた。お前のその左手の爆弾もな」
「っ!?」
暗号文でしか知らないはずの情報、そして手首の爆弾のことまで何故彼が。
動揺するAに伊達は畳み掛けるように続けた。
「俺たちを、甘く見んじゃねぇよ」
どれだけ心配したことか。
幼馴染として思うところはあったが、たった1人で孤独に苦しみ、それを自ら抱えようとする彼女に、悲しみと怒りが込み上げる。
もう止まってくれ。
懇願にも似たような、そんな募らせた2年間の思い。
「そんなに…真江以外が信用できねぇか」
「!…っち、ちが」
「だったら…っ!自分1人で犠牲になればいいとかくだらねぇこと考えてんじゃねぇ!!」
「っ…!!」
どうして1人で苦しもうとするのか。
どうして頼ってくれないのか。
助けることはいつだってできるのに、Aはそれを望んでくれたことがない。
こんなにも、大切な存在だというのに。
「…っ……!」
出会ってから初めて見た伊達の顔。
怒りをぶつけられて怯むと共に、Aの中で沸々と湧いてくる閉じ込めていた思い。
混乱に支配された頭のまま、唇を噛んで睨み返した。
「わ、かってるよ…!そんなこと!」
堰を切ったように言葉があふれ、絞り出すように叫ぶ。
彼は何も悪くない。悪いのは自分だ。
そう理解しているのに、口は止まらなかった。
「手を伸ばせば、助けてくれるって…
…そんなことずっと前から知ってる…!」
きっと目の前の彼は、「ずっと前」がどれほどのものか知らない。
絶望していた自分は何度も何度も救われてきた。
狩ることをやめて、心から笑えるようになり、前を向けるようになった。
「……っ」
だからこそ、なのだ。
だからこそ、これ以上甘えることなどできなかった。
守りたいと願い、それを行動で示さねば、いつまで経っても変わらない。
彼らの隣で、胸を張って立てるようになりたかった。
「っでも…あの日、氷室を止められなかったのは私…っ」
過去に置いてきた自分自身の過ち。
その重い罪と罰の中に、大切な彼らをどうして巻き込むことができようか。
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七草(プロフ) - ふゆりぬさん» ふゆりぬ様はじめまして〜!当作品をご覧いただきありがとうございました…!楽しんでいただけましたら嬉しいです!お言葉に甘えて来年もやらかさせて(?)いただきます…! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 早桃さん» 早桃様!この度をお付き合いくださり、また数々のコメント本当に嬉しかったです!ありがとうございました! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆりぬ - 鈍色編完結おめでとうございます!!松田くん推しなのでほんとにキュンキュンしながらとっても幸せな時間を過ごさせてもらいました。これで終わらなくてよかった、、じゃんじゃんやらかして下さい!笑これからも応援しています✨ (2022年12月26日 21時) (レス) @page50 id: b50b7f8ace (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 鈍色編完結おめでとうございます!!思いを伝えられてよかった…😭何回もごめんなさい! (2022年12月26日 12時) (レス) @page49 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - マシュマロ。さん» コメントありがとうございます!色々回収しました!(語彙力皆無) (2022年12月22日 22時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七草 | 作成日時:2022年12月4日 0時