File190 ページ23
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午前11:45。
木陰から見えた集団に伊達が反応した。
「零、松田。捜一が来たぜ」
《ようやくお出ましか》
「観覧車についてはどうやら作動装置が破壊されたらしい。
しばらくゴンドラは動かねぇだとよ」
《そりゃ好都合だな》
サイレンの音と共に現れたのは、警視庁刑事部捜査一課。
ぞろぞろと観覧車の下に群がり、従業員から話を聞いている。
彼らのこともに気しなければならないが、今はそれ以上に大事なことがあった。
《松田、止められるな?》
《ハッ、誰に向かって言ってんだ》
「俺も急ぐぜ」
《頼む》
タイムリミットの正午まで残り5分。
それまでやるべきことはふたつ。
爆弾の解体と爆破犯の確保に松田と伊達がそれぞれ動いている。
《そっちこそどうなんだよ》
《あと一歩だ》
解体の目処が立っている松田は手を止めずに降谷に問いかけた。
ここで爆弾を止めても、彼女の命が救えるわけではない。
爆破犯を確保しても、それは作戦の半分が遂行されたに過ぎない。
本当の脅威がまだ潜んでいる。
連携を取り始めた時からひたすらキーボードを打ち続ける降谷は冷静に続けた。
《班長は引き続き犯人の捜索を頼む。
犯人は爆発の瞬間を待っている…とすると、必ずどこからかゴンドラを見ているはずだ》
「あぁ、そうだ…な……」
爆発の瞬間を見たいのならそんな遠くにはいないはず。
少し移動しようと顔を上げた伊達の瞳に、不意に映った人影。
自分と同じく木陰に身を潜め、それが誰なのかを認識して言葉を失った。
《…班長?どうかしたか?》
歯切れの悪い返事に違和感を抱いた降谷がすかさず声をかける。
けれどその声は伊達には届かなかった。
《、班長…?》
瞳に映った人間を自分は幼い頃から知っており、見間違えるはずがない。
第1の現場である、ここにいるだろうと何となく予想はしていたが、まさかここで会えるとは。
ひとつ大きく息を吐いた。
「…………よぉ…」
犯人確保に急がなければと分かっている。
けれど、それでも声をかけずにはいられない。
2年ぶりの姿。
長い黒髪を揺らしながらこちらに振り返り、現れた大きな灰色の瞳。
「…久しぶりだな、A」
伊達の耳に3人分の息を飲む声が聞こえた。
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七草(プロフ) - ふゆりぬさん» ふゆりぬ様はじめまして〜!当作品をご覧いただきありがとうございました…!楽しんでいただけましたら嬉しいです!お言葉に甘えて来年もやらかさせて(?)いただきます…! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 早桃さん» 早桃様!この度をお付き合いくださり、また数々のコメント本当に嬉しかったです!ありがとうございました! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆりぬ - 鈍色編完結おめでとうございます!!松田くん推しなのでほんとにキュンキュンしながらとっても幸せな時間を過ごさせてもらいました。これで終わらなくてよかった、、じゃんじゃんやらかして下さい!笑これからも応援しています✨ (2022年12月26日 21時) (レス) @page50 id: b50b7f8ace (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 鈍色編完結おめでとうございます!!思いを伝えられてよかった…😭何回もごめんなさい! (2022年12月26日 12時) (レス) @page49 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - マシュマロ。さん» コメントありがとうございます!色々回収しました!(語彙力皆無) (2022年12月22日 22時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七草 | 作成日時:2022年12月4日 0時