File186 ページ19
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午前10:45。
「あれ…お2人とも珍しいですね」
1人は天を仰ぎ、1人はいつもより大人しくじっとして動かないまま。
自分の机から立ち上がり、視線を上げた隊員は、普段なら席を外しているはずの爆処のエース2人に向かって声をかけた。
「そろそろ一服する時間じゃないですか」
「今日はちとそんな暇がねーんだよなぁ」
「え?」
首を傾げたと同時、部屋のドアが勢いよく開かれ、現れたのは彼らの上司。
何があったのか、少し焦っている様子だった。
1枚の紙を手に、部屋全体の人間に行き渡るように声を上げる。
「捜一から要請だ」
「捜一!?」
「爆弾を仕掛けたとの犯行声明文が届いたらしい。場所は暗号で……っておい、お前ら…っ!」
「松田さん!?萩原さん!?」
石のように動いていなかった2人は、上司の声を聞くなり立ち上がり、その手にあった資料をするりと抜く。
そして少量の荷物をそれぞれ抱え、静止の声も聞かぬまま部屋を出て行った。
*
車載時計の日付は狂いなく[11月7日]を示している。
「今回ばかりは…始末書だけで済まされねーかもな」
苦笑いを浮かべたまま、萩原がハンドルをきった。
今やっている行為はどう考えても処罰行き。
けれどそんなことを気にしている余裕はなく。
助手席の松田は上司から奪い取った資料を見つめながら顔を歪めていた。
「1箇所目は…杯戸ショッピングモールだったか」
「さっき送られてきた文に書いてあったのは"72番目の席"…ってことは」
「ひとつしかねーだろ」
「まぁた厄介な場所に仕掛けたもんだな」
目星をつけた2人は嫌なやり口をする爆破犯に苛立ちを募らせる。
まさに杯戸町の、シンボルのような場所。
タイムリミットは正午まで。
無駄な時間は1秒たりともなかった。
法定速度ギリギリで走りながらハンドルを切り、その目的地が見えてくる。
適当なところで止まり、素早く松田が車を降りた。
「ヘマすんなよ?」
「誰に向かって言ってんだ。
そっちこそ頼んだぜ…萩」
「おう、任せろ」
全ての決着をつけて、彼女を救うために。
小さくなっていく松田の背を見送った萩原は、己が成すべきことをするため、またアクセルを踏み込んだ。
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七草(プロフ) - ふゆりぬさん» ふゆりぬ様はじめまして〜!当作品をご覧いただきありがとうございました…!楽しんでいただけましたら嬉しいです!お言葉に甘えて来年もやらかさせて(?)いただきます…! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 早桃さん» 早桃様!この度をお付き合いくださり、また数々のコメント本当に嬉しかったです!ありがとうございました! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆりぬ - 鈍色編完結おめでとうございます!!松田くん推しなのでほんとにキュンキュンしながらとっても幸せな時間を過ごさせてもらいました。これで終わらなくてよかった、、じゃんじゃんやらかして下さい!笑これからも応援しています✨ (2022年12月26日 21時) (レス) @page50 id: b50b7f8ace (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 鈍色編完結おめでとうございます!!思いを伝えられてよかった…😭何回もごめんなさい! (2022年12月26日 12時) (レス) @page49 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - マシュマロ。さん» コメントありがとうございます!色々回収しました!(語彙力皆無) (2022年12月22日 22時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七草 | 作成日時:2022年12月4日 0時